本研究は、ミトコンドリア病の新規原因遺伝子の発見および新たな疾患発症メカニズムの解明を目的としている。申請者らの先行研究では約230例のミトコンドリア病患者を対象としたエクソーム解析を実施し、そこから多数の新規ミトコンドリア病原因候補遺伝子を同定している。本研究ではこのうち、特に小胞体(ER)とミトコンドリアの接触点(MAM)に局在するタンパク質に着目し、新規ミトコンドリア病原因遺伝子の発見とERを介した新たな疾患発症のメカニズムの解明を行った。 エクソーム解析からMAM局在が示唆されるOCIAD2の変異を同定した。患者細胞ではmRNAとタンパク質の両方の発現が顕著に減少しており、また変異型タンパク質を発現させた場合にも変異を持つOCIAD2のタンパク質は発現が低下していた。このことから、今回同定したOCIAD2変異はタンパク質の安定性に寄与するものであると考えられた。また、患者細胞では、ミトコンドリアの明らかな伸長を認めた。同様にして、OCIAD2のノックダウンを行った場合にも、ミトコンドリアの異常な伸長を観察した。一方で、OCIAD2を過剰発現させた場合にはミトコンドリアは顕著に分裂が亢進していたことから、OCIAD2はミトコンドリアの分裂に寄与する因子であることが示唆された。これらのことから、OCIAD2変異を持つ患者ではミトコンドリアの分裂異常が原因となって、ミトコンドリア機能不全が生じていると考えられた。
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