研究課題/領域番号 |
26870546
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
横田 和浩 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (20406440)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 骨芽細胞 / 末梢血単核球 / 炎症性サイトカイン / 腫瘍壊死因子 / Wntシグナル / 動脈硬化症 |
研究実績の概要 |
ヒト健常人由来の末梢血単核球を象牙質上で培養し、炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNFα)で刺激すると骨芽細胞系細胞分化の指標である石灰化組織が高頻度に形成されることを見出した。この新知見は、末梢血中に骨芽細胞系細胞が存在を疑わせるものである。本研究では、末梢血中において、骨芽細胞に類似した骨芽細胞系細胞を同定し、その役割を明らかにすることを目的とする。末梢血中の骨芽細胞系細胞の存在が明らかになることで、動脈硬化の特徴の一つである血管壁の石灰化についての新たな制御へ発展していくことが期待される。 当該年度に実施した研究の成果は以下の内容である。① 末梢血単核球を象牙質上で培養しTNFαで刺激すると、TNFα濃度依存性に骨芽細胞系細胞分化の指標である石灰化組織が形成された。② もう一つの主要な炎症性サイトカインであるIL-6刺激においても、同様に象牙質上に石灰化組織が形成された。③ 培養末梢血単核球をTNFα刺激により骨芽細胞の分化には必須であるOsterix mRNAの発現が誘導された。また、骨芽細胞マーカーであるAlkaline Phosphatase, Osteoprotegerin, osteocalcin mRNAの発現が誘導された。さらに間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化の際に活性化されるWntシグナル mRNAが誘導された。このことは末梢血単核球中の細胞の一部(間葉系幹細胞)が骨芽細胞へ分化誘導した可能性を示唆する。④ 末梢血単核球を象牙質上だけでなく、ポリクロロトリフルオロエチレンフィルム上で培養し、TNFαで刺激した際にも石灰化組織が形成されることが明らかになった。このことは末梢血単核球由来の骨芽細胞系細胞が象牙質上だけでなくても、他の部位においても石灰化組織を形成する可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は末梢血中の骨芽細胞系細胞の研究を行っているが、一般的に骨芽細胞、骨芽細胞系細胞は骨髄内に存在し、末梢血中に存在するという概念はほとんど知られていない。そのため、末梢血中に骨芽細胞系細胞が存在するか確認することが必要不可欠であった。そこで培養末梢血単核球において、TNFα刺激により骨芽細胞の発現分子(Osterix, Alkaline Phosphatase, Osteoprotegerin, osteocalcin) mRNA発現レベルを確認したところ、いずれも発現分子mRNAが有意に誘導されていた。また、末梢血単核球中の細胞の一部から骨芽細胞系細胞が分化誘導する機序を明らかにするために、間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化誘導の際に活性化されるWntシグナル mRNAの発現レベルを解析した。その結果、培養末梢血単核球をTNFαで刺激することによりWntシグナル mRNAの発現が誘導されることが明らかになり、末梢血単核球中の細胞の一部が骨芽細胞系細胞に分化誘導する機序を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、以下の4つの計画・方法で研究を継続していく。① 末梢血単核球から磁気細胞分離装置を用いて、骨芽細胞系細胞(抗オステオカルシン陽性細胞、またはCD34陽性細胞)を分離する。② 分離されたそれぞれの細胞を象牙質上で培養し、TNF, IL-6でのそれぞれの刺激によって、石灰化組織の形成されるか、電子顕微鏡で確認する。③ 分離されたそれぞれの細胞をTNFでの刺激によって、骨芽細胞分化に必須な転写因子 (Runx2, Osterix) mRNAの発現レベルが増加するか、real-time PCRで解析する。④ 生体内で誘導できるか確認するため、分離されたそれぞれの細胞をTNF, IL-6で刺激後、回収し、マウス腹腔内に移入し、石灰化組織が形成されるか、レントゲン撮影により評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
末梢血単核球より抗オステオカルシン抗体、抗CD34抗体を用い、磁気細胞分離装置でそれぞれの細胞を分離する予定であった。しかし、予備実験による末梢血単核球のオステオカルシン、CD34 mRNA発現の確認が不可欠であった。この確認実験の再現性の確認のために、抗オステオカルシン抗体、抗CD34抗体の購入が遅れてしまい、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の確認実験は終了しており、次年度に上記の実験を行うための抗体を購入する予定である。これにより次年度使用額は使い切ることが出来る。
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