[目的]関節リウマチ(RA)は全身性慢性炎症疾患であり炎症性サイトカインが強く関連すると共に、心血管疾患(CVD)を合併することが多いことが知られている。主要なCVDの危険因子は、血管壁石灰化が挙げられる。最近、末梢血中を循環している骨芽細胞系細胞が血管壁の石灰化に関与していることが報告されている。そこで、ヒト末梢血単核球を用いて、炎症性サイトカインTNFα刺激による骨芽細胞様細胞への分化誘導・機能を検索した。 [方法]末梢血は健常人より採取し、比重遠心法にて単核球へ分離した。得られた単核球を象牙質上で21日間、TNFαまたはRANKLで刺激・培養した。形成された石灰化物質を電子顕微鏡で観察し、構成元素と濃度をエネルギー分散型X線分析(EDX)で調べた。培養単核球細胞の特性を調べるためにosteoprotegerin (OPG)、RANKL、ALP、osteocalcin、Runx2、osterix mRNAの発現レベルをreal-time PCR法で解析した。 [成果]末梢血単核球を象牙質上で培養し、TNFαで刺激すると濃度依存性に石灰化物質の形成を認めた。同様にマウス骨芽細胞前駆細胞であるMC3T3も石灰化物質を形成した。この石灰化物質はEDXによる解析で、主にカルシウムとリンであった。一方、TNFαで刺激した末梢血単核球のreal-time PCR法による解析の結果、OPG、ALP、osteocalcin、Runx2、osterix mRNAの発現量が無刺激・RANKL刺激と比較して有意に増加していた。 [意義・重要性]ヒト末梢血単核球をTNFαで刺激すると石灰化物質の形成能を有する骨芽細胞様細胞が分化誘導された。このことはTNFαが組織の石灰化に関与していることを示し、RAにおけるTNF阻害療法はTNFαの低下を介して、血管の石灰化を抑制する可能性を示唆するものである。
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