平成29年度は,平成28年度までに実施を予定をしていたが,研究中断により実施ができなかった,補足・追加実験と,研究結果のまとめを行った. 本研究では,ZFラットを用いた実験により,「食餌制限のみで体重を抑制した場合には脂肪肝が悪化し,食餌制限と自発走運動を併用した場合には脂肪肝が改善した」という現象について,そのメカニズムを追究し,以下の結果を得た. 食餌制限のみの実施では,脂肪細胞の肥大化が確認され,それに伴い,脂肪組織における脂肪分解が活発であることが示された.血中に流失した遊離脂肪酸の増加に伴い,肝臓への遊離脂肪酸の取り込みの増加が生じ,脂肪肝の進行を促進した可能性が考えられた.極度に肥大化した脂肪細胞では,単一脂肪細胞内への更なる脂肪蓄積が難しく,血中遊離脂肪酸の増加を介して肝臓へ蓄積する量が増加すると考えられた. 一方,食餌制限と運動を併用した場合には,脂肪細胞の肥大化は抑制され,脂肪組織における脂肪分解,血中遊離脂肪酸,肝臓への遊離脂肪酸の取り込みが抑制された. したがって,運動の実施は,脂肪組織の形態的・質的変化を生じさせ,脂肪肝の発症を予防すると考えられた.
|