研究課題/領域番号 |
26870555
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
池宗 佐知子 帝京平成大学, ヒューマンケア学部, 助教 (80571166)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 鍼通電 / 刺激周波数 / 血中乳酸濃度 |
研究実績の概要 |
我が国の高齢者人口の増加に伴い、介護を要する人の数も増加する事が予想されている。介護を要する際、原因となる疾患の一つとして脳血管障害が挙げられる。脳血管障害患者の多くは後遺症として片側が麻痺する事がある。片麻痺は患者のQOL低下を招く恐れもある。近年、このような患者を他職種と連携し地域でケアするシステムが構築されてきた。このシステムの中ではり師・きゅう師が担う役割も多くある。しかし、片麻痺やその後に誘発される筋萎縮に対する明確な鍼灸の臨床効果は少なく、その基礎研究の成果が求められている。本研究においては、不活動により誘発される筋萎縮に対する鍼通電刺激について効果的かつ臨床応用可能な刺激法についてその効果と共に明らかとすることを目的としている。 平成27年度、上腕二頭筋に対し1Hz、10Hz、100Hz(連続)の刺激周波数について15分間の鍼通電刺激を行い、筋力の評価と共に血糖値、血中乳酸濃度を指標とした評価を刺激前後で検討した。その結果、100Hz(連続)の周波数による鍼通電刺激後に筋力低下の可能性、血中乳酸濃度の上昇を示した。しかし、15分間の鍼通電刺激は、長時間同一姿勢をとる必要があり、患者の負担も大きくなることから、平成28年度は同様の刺激において10分間での効果を検討した。その結果、15分間で得られた結果と同様の結果が得られた。さらに、100Hz(連続)の刺激は筋力低下を招くことから、100Hzの間欠刺激での効果を検討した。100Hzの間欠刺激では、筋力の明らかな低下は認められなかったものの、血中乳酸濃度は100Hz(連続)に類似した効果が得られた。これらの結果から、10分間での100Hz(連続)および100Hzの間欠が効果的な刺激である可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の研究成果を踏まえ、刺激周波数だけでなく、刺激時間の違いによる速筋線維への治療効果について検討する事ができた。上腕二頭筋への鍼通電刺激後に生じる乳酸は、特に速筋線維の収縮に伴い発生する。これらの事から、本研究で得られた100Hzの高頻度鍼通電刺激は、速筋線維を選択的に収縮させる可能性があることが考えられる。一方で、筋線維タイプによる反応性の違いは検討できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで上腕二頭筋に対し治療効果を筋力、乳酸濃度の変化から検討した。これらは、速筋線維の効果検討であるため、遅筋線維に対しての効果ではない。高齢者の筋萎縮は活動量の低下に伴い速筋線維が萎縮するものもあるが、不活動に伴い引き起こされる場合遅筋線維の萎縮が起こる。そこで、筋組成が主に遅筋線維で構成される筋に対する刺激の効果を検討し、速筋線維タイプへの効果と遅筋線維タイプへの効果に差があるのかどうかを検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までの繰越額が影響し、当初の予算額の使用が見込めなかった。さらに、簡易で行える測定は行っているが、その他生化学的な評価には至っていないため、次年度へ繰り越しが生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
血中乳酸濃度の測定、血糖値の測定、筋力の測定に加え、鍼通電刺激前後での唾液を用いた非侵襲的な生化学評価としてコルチゾールやIGF-1の測定を検討している。 刺激した筋、刺激周波数毎に、これらの指標について評価を追加し行う予定である。そのために、実験の実施期間を延長する事を予定している。
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