脳卒中後の運動麻痺の治療として経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)や,経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を用いることで,運動麻痺や高次脳機能障害の改善の一助になることが明らかになっている.半球間抑制の理論に従い,非病巣側を抑制(tDCSでは陰極,rTMSでは低頻度刺激)することや,病巣側を促通(tDCSでは陽極,rTMSでは高頻度刺激)することによって脳内の活動のバランスが改善され,運動麻痺の改善に対して有効である.今回,脳卒中後の患者を対象にrTMSとtDCS前後で上肢パフォーマンスと運動学的変化について検討した. 回復期リハビリテーションに入院している初発脳卒中患者を対象とした.rTMSは非病巣側を抑制し,運動速度の変化とパフォーマンスの変化がみられた.tDCSは非病巣側の抑制と病巣側の促通刺激を同時に実施し,rTMSと同様に運動速度の変化とパフォーマンスの変化がみられた.どちらの脳刺激も脳卒中後の半球間のアンバランスが改善されることで,特に脳卒中の特徴的な痙縮,筋緊張の亢進が軽減することが運動速度の変化につながったと考えられる.そのため,脳刺激によって運動が円滑になり,上肢パフォーマンステストが向上したと考えられる.また,2つの脳刺激を別日で実施したところ,麻痺の改善効果に大きな差がなかった.どちらの脳刺激も脳内活動が変化することで,麻痺による痙縮の軽減に効果を示した.脳内で起こる脳刺激による機序は同様であり,運動学的な検討と上肢パファーマンスの変化で大きな差は生じなかったと示唆した.
|