研究課題/領域番号 |
26870563
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
佐藤 英介 杏林大学, 保健学部, 助教 (00439150)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | BNCT / MR diffusion / MR Spectroscopy / BPA |
研究実績の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の治療効果は,腫瘍内に取り込まれたホウ素化合物(BPA)のホウ素量とその分布に大きく依存する.このBNCTでは,「腫瘍内のホウ素分布は均一である」という前提で治療計画が立案されているが,実際の腫瘍内(ミクロレベル)でのホウ素分布は不均一であるため,治療計画で立案された患者に付与される線量は正確ではない.そのため,より高精度のBNCTを実現するためには,ミクロレベルのホウ素分布を画像化して治療計画に活用することが必要である.そこで,本申請者は,腫瘍内のミクロな構造変化や代謝変化から腫瘍内のホウ素分布をMRIで画像化することを目的とした. 平成26年度は,MRIで利用可能な脳腫瘍モデルファントムの作製および性能評価に取り組んだ.ポリビニルアルコール(PVA)をファントム素材として脳の正常部および腫瘍部を模擬した数種類のファントムを作製し,3.0-Tesla MR装置を用いてT1値・T2値の測定を行った.その結果,PVA濃度とT1値・T2値との関係を明らかにできたことから,実際の脳の正常部および腫瘍部に類似した脳腫瘍モデルファントムを作製できる可能性が示唆された.次に,本脳腫瘍モデルファントムの拡散度合いを評価することを目的としてMR diffusionデータを取得し,PVA濃度とMR diffusionデータから得られるFA値およびADC値との比較を行った.その結果,PVA濃度がFA値およびADC値に与える影響は小さく,その差はわずかであった.これは,検討したPVA濃度の差が微小であったことが主な要因であると考えている.さらに,脳腫瘍患者を想定したMR diffusionデータの撮像条件ならびに解析手法に関する基礎検討も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は2カ年計画で実施し,平成26年度の進捗状況は概ね当初の計画通りである.現時点において,脳腫瘍モデルファントム作製に必要な基礎データ取得およびMR diffusionにおける撮像条件の最適化が終了した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最大のポイントは、実際の人体に類似した脳腫瘍モデルファントムを作製し,この脳腫瘍モデルファントムを用いて腫瘍内のミクロな構造変化や代謝変化から腫瘍内のホウ素分布をMRIで画像化することである.現時点において,実際の脳腫瘍を模擬したファントムの基礎データは得られている.これらのデータを元にして脳腫瘍モデルファントムの作製および評価に取りかかる.本ファントムは,正常部および腫瘍部が独立したタイプ,正常部に腫瘍部が浸潤したタイプなど,数種類のものを検討中である.また,本ファントムに脳内代謝物(Cho・Cr・NAA)およびホウ素化合物(BPA)を取り込ませ,MR spectroscopyデータを取得するとともに,高周波プラズマ発光分析装置(ICP-AES)を用いてホウ素量との比較を行い,MRIにおけるホウ素分布の取得精度を検証する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
脳腫瘍モデルファントムを作製するにあたり,PVA濃度とT1値・T2値の関係およびFA値・ADC値の関係を調査するため,脳腫瘍モデルファントムの完成品ではなく数通りのサンプルを購入して検討を行った.また,MR diffusionデータの解析は既存の脳機能解析ソフトで行った.以上が,次年度使用額が発生した主な理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,平成26年度に使用を予定していた脳腫瘍モデルファントムの完成品およびMR spectroscopyデータ解析用ソフトの購入に充当する予定である.平成27年度分として予算計上したものについては,研究計画に記載した通りの使用を予定している.
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