これまでの食品成分の生体調節機能は、腸管で吸収され生体利用性が高いことが重要であると考えられており、生体利用性の低い成分は生体応答に関与しないとされていた。しかし、今回DIOマウスにおいて、高分子プロシアニジン摂取が腸内細菌叢を変化させ、F/B値の改善や、Akkermansisa muciniphiliaを増加させることが明らかになった。また、高分子プロシアニジン摂取によって慢性炎症の改善効果や腸管バリア機能の向上も認められたことからAkkermansisa muciniphiliaが重要な役割を担っていると考えられる。最近、リンゴ以外のポリフェノール類にもAkkermansisa muciniphiliaを増加させる効果があることが報告されているが、DIOマウスにおける腸内細菌叢の変動やバリア機能の向上効果は、本研究により初めて明らかになったものである。高分子プロシアニジンにより体重を減少させるまでの肥満改善効果は得られなかったが、肝臓の脂肪蓄積の減少、腸管バリア機能の向上、慢性炎症の予防・改善など肥満に伴う症状を顕著に改善することが明らかになった。食生活の欧米化が進み、肥満者およびその予備軍が増加している現在、肥満改善の視点からのアプローチは大変重要であると考えている。プロシアニジン類に限らず、生体利用性の低い高分子ポリフェノールは、果実やワイン、お茶類など様々な食品に含まれており、これらの食品の生体調節機能に腸内細菌が関与している可能性が考えられる。今後、関与する腸内細菌種の特定や、腸管での作用機序の解明などを進めることにより、高分子ポリフェノールの肥満改善効果における役割について詳細に明らかにしていきたいと考えている。
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