研究課題/領域番号 |
26870570
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
富田 紘史 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50464954)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小児肝移植 / 肝線維化 / 抗ドナー抗体 / 非侵襲的診断 / ARFI / 肝硬度 / 脾硬度 / 門脈圧亢進症 |
研究実績の概要 |
慶應義塾大学医学部小児外科、小児科において慢性肝疾患のために診療を行っている患者を対象として、ARFI imaging による肝脾硬度の測定を行う臨床研究を平成25 年5 月より開始している。3年連続で測定を行う計画であり、平成26年度は対象患者に2年目の測定を行った。これまでの結果として、脾硬度測定が門脈狭窄・肝静脈狭窄といった肝移植後合併症の評価に有用な可能性がある、というデータが得られ、パイロット研究としてPediatric Radiology誌に論文投稿し、平成26年12月に論文掲載となった。他の研究付随データとして胆道閉鎖症術後患者の肝線維化や食道静脈瘤の予測に役立つという結果も得られており、日本小児外科学会や日本胆道閉鎖症研究会で発表を行った。小児肝疾患の肝・脾硬度のデータは世界的にも数えるほどしか論文発表されておらず、貴重なデータが得られている。 小児肝移植後のグラフト線維化の原因に迫る研究として、「小児肝移植遠隔期におけるグラフト線維化と抗ドナー抗体の関係解明」と題して施設倫理委員会に臨床研究実施の許可を得て、平成26年10月より同意が得られた小児肝移植後の患者・ドナーから血液の提供を受けて現在までに14例の抗ドナー抗体測定を行っている。これまでの結果では、T細胞フローサイトクロスマッチで14名中5名、B細胞フローサイトクロスマッチで14名中9名の陽性反応が出ている。これらの患者にはいずれも針肝生検を施行しており、F2以上の門脈域線維化を3名に、中等度以上の類洞周囲線維化を7名に認めているが、まだ症例数が少ないため抗ドナー抗体との明確な関連性は示すことができない状態である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いずれの臨床研究も特にトラブルなく症例数・計測データを順調に増やしている。抗ドナー抗体やグラフト肝線維化の陽性率は研究前に予測された範疇であり、統計解析で結論を出すのに十分な症例数になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ARFI imaging による肝脾硬度の測定を行う臨床研究は、引き続き3年目の測定を行う予定である。付随的に得られた肝脾硬度測定のデータに関しても、随時学会発表や論文発表を行っていく予定である。抗ドナー抗体の測定は順調に症例数を増やせており、今年度中に患者のリクルートを終了する予定である。ドナーの血液を用いたフローサイトクロスマッチに加えて、既知のHLAパネルを用いた抗HLA抗体の測定を開始する。これに用いる患者血清は順次保存している。結果が揃い次第、免疫抑制療法の施行状況など必要なデータを集めて結果解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額の発生は、効率的な物品調達を行った結果である。また、最も費用のかかる抗HLA抗体の測定をまだ行っていない。
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次年度使用額の使用計画 |
抗HLA抗体の測定を、プールした検体で集中的に行うことで、効率的に研究を進めていく計画である。
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