研究課題
脳梗塞における修復担当細胞の特徴を決定し、これらが脳梗塞後の炎症によって誘導される分子メカニズムを解明した。脳梗塞の炎症は、脳細胞の虚血壊死に伴う内因性炎症惹起因子(DAMPs)の放出によって惹起されるが、DAMPsが脳組織から排除されることが炎症の収束、組織の修復に重要であることを見出した。脳梗塞から炎症細胞を抽出し、蛍光標識したDAMPsを添加したところ、マクロファージの細胞内に取り込まれていることを見出した。その分子メカニズムを探るため、マクロファージ細胞株(RAW264.7)に高効率のランダム変異を導入し、DAMPsを取り込まない細胞株を樹立して、マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析を行った。DAMPsはScavenger受容体によってマクロファージの細胞内に取り込まれ、リソソームに運ばれることによって分解されていることが判明した。Scavenger受容体の欠損マウスでは、脳梗塞の体積が拡大し、DAMPsの組織内残存がみられ、脳梗塞後の炎症が遷延化していることが明らかとなった。脳梗塞後の炎症によって、マクロファージにおけるScavenger受容体の発現が上昇し、特にScavenger受容体の発現が高いマクロファージは炎症を起こさず、DAMPsを積極的に排除し、修復因子を主に発現することが明らかとなった。今後は、脳梗塞後のScavenger受容体の発現誘導に関わる因子の同定を試み、炎症の収束を促進することができる薬剤の開発に研究成果をつなげる必要がある。
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