研究課題/領域番号 |
26870574
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高橋 綱己 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (60724838)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノ半導体 / 熱伝導率 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,ナノスケール半導体の熱物性を実験的に明らかにし,その結果に基づき将来の電子デバイス設計指針を示すことを目指している.初年度となる本年度は,(1)電流-電圧特性の解析によって熱伝導率を評価するための測定系の構築,(2)高濃度に不純物イオンが添加されたナノサイズシリコン構造の作製,を行った.また,ナノスケール電界効果型トランジスタを構成する材料の熱伝導率が,動作温度および素子性能に与える影響を,シミュレーションによって評価した. 測定系に関しては,微少な電気抵抗の変化を正確に測定するために,AC電流源とディジタルロックインアンプを用いた4端子測定系を構築した.標準的な抵抗体(金属細線)の4端子測定を行い,測定値の妥当性を確認した. 熱酸化・酸化膜剥離によって20ナノメートル程度に薄膜化したシリコン層を,電子線描画およびドライエッチング装置を用いて加工し,最小幅50ナノメートル程度のナノワイヤ構造を作製した.不純物イオン(リン,ヒ素)はイオン注入によって高濃度に添加した.線幅50ナノメートルの形状は,同条件で加工したバルクシリコン基板の走査型電子顕微鏡観察によって確認している. 発熱の影響が懸念されている,先端電子デバイス(立体構造トランジスタ)において,素子を構成する材料の熱伝導率が動作温度および素子特性に与える影響を,3次元シミュレーションによって解析した.その結果,ナノスケール電子デバイスにおいては材料の熱物性が動作時温度だけでなく消費電力にも影響を与えていることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた研究実施計画は,主に測定系の構築と素子作製の二点である.測定系に関しては,必要な計測器の購入および立ち上げを行い,標準的な素子で確認を行った.また,素子作製については,予定していたとおり電子線描画とドライエッチングを利用して幅数十ナノメートルの構造を作製し,その形状を走査型電子線顕微鏡によって確認した.シリコンナノワイヤの架橋化は今後行うが,無水フッ酸による細線構造の架橋化プロセスは金属細線によって行い,形状確認を終えている.以上から,本年度までの達成度について,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
作製したナノスケール半導体素子の,熱物性値を実験的に得ることを第一の目標とする.様々な素子サイズ・不純物イオン濃度の素子を作製し,熱伝導率や熱容量といった物性値を電気特性の測定・解析によって評価する.同時に素子内部の温度分布を得るための素子構造の検討および作製も進めていくが,得られた熱物性値によっては内部の温度分布を実験的に得ることは難しいことも考えられる.その場合は,理論計算によって温度分布を得ることなども検討する.
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