研究課題/領域番号 |
26870580
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
中川 雅史 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (10415721)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 土木構造物 / 構造物点検 / 衛星測位 / 画像計測 / 位置情報 / モバイル端末 / 位置補正技術 / 重畳表示技術 |
研究実績の概要 |
本研究は,土木構造物の老朽化に伴う膨大な量の点検作業(補修時期の判断を下すための作業)を迅速かつ簡易に実施できるよう,日常的に行う点検作業を非専門家に委託し,集積された点検結果から専門家が補修時期の判断を下す点検作業のクラウドソーシングという新たな運用技術を提唱することを目的としている.これを実現するため,衛星測位と画像計測を基礎技術とし,SfM法を利用した位置補正技術とSIFT法を利用した点検履歴画像の重畳表示技術を開発している.さらに,国土交通省等より提示される構造物を対象に実証実験を行い,本技術が従来型の点検作業と同等品質を確保できるかを検証し,自治体や地域住民間での活用に波及できるか調査研究している. 明らかにする項目は,(A)専門家を対象としたモバイル端末を用いた点検手法における課題整理(陸上から非専門家が立ち入って点検可能な橋梁や道路,擁壁といった土木構造物を対象とする.さらに,ここで得られる点検記録項目の整理とモデリングを行う),(B)モバイル端末で得た位置情報の補正に関する有用性の検証(点検者ナビゲーション手法の構築,および,位置情報補正技術の開発を行う),(C)非専門家を対象とした実用での利用可能性に関する実証(点検履歴画像の重畳表示技術の開発,および,土木構造物点検における実証実験を通し,自治体においてクラウドソーシングに基づく運用法を導入するにあたっての検討項目を整理し,提案手法の改良を行う)である.平成26年度においては,上記の(A)を中心に研究を実施している.さらに,(B)と(C)の一部についても研究を実施している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で明らかにする項目に(A)専門家を対象としたモバイル端末を用いた点検手法における課題整理,(B)モバイル端末で得た位置情報の補正に関する有用性の検証,(C)非専門家を対象とした実用での利用可能性に関する実証,を挙げている.これらを明らかにするための実施項目は,(a)点検記録項目の整理とモデリング(点検作業における位置・方向・仰角の必要精度を明らかにする),(b)点検者ナビゲーション手法の構築(GPSを利用した経路案内アプリケーションの構築により,点検作業の効率性を向上できるかを明らかにする),(c)位置情報補正技術の開発(SfM法を利用した位置補正法の開発,および,点検位置および天空率推定のための実験場の3D計測により,測位精度や継続性,可用性を向上できることを明らかにする),(d)点検履歴画像の重畳表示技術の開発(SIFT法を利用した画像重畳表示の開発により,非専門者が取得した点検情報の活用可能性を明らかにする),(e)土木構造物点検における実証実験,である. 平成26年度は,さいたま市や国交省,企業(建設コンサルタントなど)の協力を得て,土木構造物点検のためのモバイル点検データ収集および土木構造物の3Dデータ取得を実施している.したがって,(e)(土木構造物点検における実証実験)を実施済みである.(e)における実証実験において,(a)(点検記録項目の整理とモデリング)および(b)(点検者ナビゲーション手法の構築)についてほぼ実施済みである.さらに,(c)(位置情報補正技術の開発)および(d)(点検履歴画像の重畳表示技術の開発)に関する研究を始めている.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,(A)専門家を対象としたモバイル端末を用いた点検手法における課題整理,(B)モバイル端末で得た位置情報の補正に関する有用性の検証,(C)非専門家を対象とした実用での利用可能性に関する実証,を実施するうえで,平成26年度に引き続き,さいたま市や国交省,企業(建設コンサルタントなど)の協力を得て,土木構造物点検のためのモバイル点検データ収集および土木構造物の3Dデータ取得を追加実施する. 平成27年度において主として実施する研究項目は,(c)位置情報補正技術の開発(SfM法を利用した位置補正法の開発,および,点検位置および天空率推定のための実験場の3D計測により,測位精度や継続性,可用性を向上できることを明らかにする),(d)点検履歴画像の重畳表示技術の開発(SIFT法を利用した画像重畳表示の開発により,非専門者が取得した点検情報の活用可能性を明らかにする)である.また,平成26年度において実施した(a)(点検記録項目の整理とモデリング)および(b)(点検者ナビゲーション手法の構築)の中で,構造物周辺におけるGPSを利用した位置情報取得および管理における技術的課題(測位精度,コスト,可用性,完全性)を整理できたので,これに対する実用的な解決手法(別途取り組んでいる慣性航法や画像標定処理技術を用いた手法)の提案についても実施する.さらに,実験で得られた結果をまとめて,学会発表(測量分野や建設分野の国際・国内学会など)や研究展示,技術者向け講演会(測量分野や建設分野,ロボット分野),Webページ掲載等を通した成果の発信を進めるとともに,各社から要請のある技術相談にも随時応じる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実施にあたって必要な予算と交付決定額の差額分を調整するため,研究開始時に主に実験数を減らすことでの対応を当初計画した.さらに,研究実施に必要なGPS測位機能つきモバイル端末,GPSカメラ等,既購入装置を効率よく利用できた.これにより,次年度使用額が生じた.物品の新規購入や追加の実験を検討したが,これらには予算が不足しており,次年度に繰り越すことが望ましいと考えたため,次年度使用額が生じることになった,
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度において新規購入した物品であるGPS(GNSS)受信機(ublox)もしくはヘッドマウントディスプレイ(OCCULUS)を本研究においてより有効活用できるよう,機能拡張を目的として関連機器(高感度アンテナもしくはカメラ)の購入を計画している.
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