ナノコラムフォトニック結晶レーザーの実現可能性を確認するため,理論的な検討を行った。AlGaN層上にGaNナノコラムが三角格子状に配置した構造について,垂直方向の光閉じ込めモードの計算と,面内方向のフォトニック結晶におけるバンド端波長の計算を組み合わせ,キャビティー構造を設計した。設計された三次元構造について電磁界シミュレーションを行ったところ,特定の波長について光の閉じ込めが認められ,設計手法の妥当性が確かめられた。 実験的な検討として,サンプルの作製と光励起によるレーザー発振の実証を試みた。AlGaN/GaN分布ブラッグ反射鏡上に,InGaN系活性層を含むGaNナノコラムをTiマスク選択成長法を適用した分子線エピタキシー法で配列成長させた。このサンプルについてNd:YAGレーザーによる光励起発光特性を調べた。周期260nmの三角格子配列ナノコラムについて,0.2MW/cm2以上の励起強度で波長506.6nmに線幅2nm以下の鋭いピークが得られ,ピーク強度の励起強度依存性はしきい値を持った非線形特性を示したことから,ナノコラムフォトニック結晶によるレーザー発振が実証された。また,直径に変化を加えることで発振帯域が増大し,スペックルノイズが低減できることや,複数本のナノコラムの集合を格子点に配置した周期構造(クラスタ配列ナノコラムフォトニック結晶)によって極細線ナノコラムでもΓ点レーザー発振が可能になる手法などを提案した。 電流注入デバイスの試作と評価も行った。デバイス結晶は,前述の構造上にp型層を加えた構造で,ナノコラム上部およびナノコラム下部のn型膜結晶に電極を成膜することでデバイスを完成させた。IV特性は立ち上がり電圧6V程度の整流性を示し,緑色の発光が得られた。しかしながらレーザー発振は確認できず,結晶成長条件や電極プロセスなどに課題が残されていることが分かった。
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