研究課題
骨形成のメカニズムは諸説あるが完全には解明されていない。申請者は、骨芽細胞を放電陽極酸化処理したチタン板上で培養することにより石灰化が顕著に亢進されることを見出した。本研究では陽極酸化チタンの骨芽細胞石灰化誘導モデルを用いることで、骨形成メカニズムを解明するとともに、骨再生の臨床応用に向けた治療基盤を確立することを目的とする。リン酸二水素ナトリウム溶液中で放電陽極酸化処理されたチタン板が培養骨芽細胞に対する与える影響を検討するために、マウス初代骨芽細胞を未処理の表面研磨純チタン板と放電陽極酸化処理したチタン板上で培養し比較を行った。平成26年度はまずチタン板上で培養後の骨芽細胞からmRNAを採取しDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、陽極酸化チタン板上で培養した骨芽細胞は未処理の研磨チタンに比べ、209個の遺伝子が上昇し、195個の遺伝子が低下していることがわかった。また、Gene ontology解析によりこれらの遺伝子は石灰化や細胞分化に関わる遺伝子群であることが明らかとなった。特に骨石灰化に重要な非コラーゲン性タンパク質であるOsteocalcin、Bone sialoprotein、Dentin matrix proteinをコードする遺伝子の発現が顕著に上昇することがわかった。さらにDNAマイクロアレイ解析で変化の見られた遺伝子について、リアルタイムPCRを用いて発現量を比較した結果、DNAマイクロアレイ解析と同様の傾向を示すことがわかった。そして、DNAマイクロアレイ解析の結果を基に石灰化に関わる各種因子を阻害した実験では、陽極酸化チタンで上昇した非コラーゲン性タンパク質の遺伝子発現が一部抑制されることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
DNAマイクロアレイ解析により、陽極酸化チタン板上で培養した骨芽細胞は未処理の研磨チタンに比べ、209個の遺伝子が上昇し、195個の遺伝子が低下していることがわかった。また、Gene ontology解析によりこれらの遺伝子は石灰化や細胞分化に関わる遺伝子群であることも明らかとなった。この結果は、これらの発現変化の見られた遺伝子の中に陽極酸化チタンで誘導される骨芽細胞の石灰化を制御しているものが存在する可能性を示唆する。今後は、この候補遺伝子の中から石灰化に深く関わるものを特定する実験を行っていく予定である。また、DNAマイクロアレイ解析の結果を基に石灰化に関わる各種因子を阻害した実験では、陽極酸化チタンで上昇した非コラーゲン性タンパク質の遺伝子発現が一部抑制されることを見出した。これにより陽極酸化チタンによる骨芽細胞石灰化誘導の経路が一部明らかになった。
これまでの実験結果から陽極酸化チタンで誘導される石灰化は骨芽細胞が陽極酸化チタン上に接している必要があると我々は考えている。今後は、陽極酸化チタンの表面性状の解析を基に、足場としてどういった細胞周囲環境が骨芽細胞の石灰化を誘導するのかを明らかにしていく方針である。そして最終的には陽極酸化チタン以外でも、その周囲環境を再現することで同様の石灰化を誘導することを目標とする。なお、DNAマイクロアレイ解析とシグナル経路の阻害実験により骨芽細胞石灰化の細胞内経路は一部特定しつつあるが、陽極酸化チタンで上昇した遺伝子発現の抑制は一部であるため、陽極酸化チタンで誘導される石灰化機構は複数の経路をたどっている可能性が高い。今後シグナル経路を一つ一つ検証していくとともにそれぞれの相互作用も検討する必要があると考えられる。
今年度予定していたラット大腿骨のインプラント埋入モデルを用いて陽極酸化処理と未処理のミニインプラントの骨結合能を比較する実験は、ミニインプラント作製段階にとどまり、埋入実験は次年度に本格的に実施することとした。そのため、ラット購入・飼育に関わる費用ならびに解析に要する費用を次年度使用する。
インプラント埋入実験用のラットを購入する。また、その後のインプラント埋入した大腿骨の組織解析と遺伝子解析用の各種試薬と消耗品を購入する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Endocrinology
巻: 156 ページ: 314-322
10.1210/en.2014-1032
J Neg Results BioMed
巻: 13 ページ: 18
10.1186/s12952-014-0018-0