研究課題
骨形成のメカニズムは諸説あるが完全には解明されていない。申請者は、骨芽細胞を放電陽極酸化処理したチタン板上で培養することにより石灰化が顕著に亢進されることを見出した。本研究では陽極酸化チタンの骨芽細胞石灰化誘導モデルを用いることで、骨形成メカニズムを解明するとともに、骨再生の臨床応用に向けた治療基盤を確立することを目的とする。リン酸二水素ナトリウム溶液中で放電陽極酸化処理されたチタン板が培養骨芽細胞に対する影響を検討するために、マウス初代骨芽細胞を未処理の表面研磨純チタン板と放電陽極酸化処理したチタン板上で培養し比較を行った。申請者は平成26年度に、遺伝子発現解析の結果から陽極酸化チタン板上で培養した骨芽細胞は未処理の研磨チタンに比べ、骨石灰化に重要な非コラーゲン性タンパク質をコードする遺伝子群の発現が顕著に上昇することを明らかにしている。平成27年度は、その遺伝子発現上昇を指標として、石灰化亢進の誘因を探った。まず、陽極酸化チタン板と未処理の研磨チタン板の周囲で培養された骨芽細胞を比較したところ、各非コラーゲン性タンパク質の遺伝子発現に変化は見られなったことから、陽極酸化チタン板上で培養した骨芽細胞の石灰化亢進は、その骨芽細胞が分泌する液性因子によるものではない可能性が強く示唆された。次に、一度チタン上で培養した骨芽細胞を剥がし、通常の細胞培養プレートに移して培養した結果、陽極酸化チタンで誘導される各非コラーゲン性タンパク質の遺伝子発現上昇はキャンセルされることがわかった。この結果は、陽極酸化チタンで誘導される石灰化の亢進は骨芽細胞が陽極酸化チタン上に接している必要があること示す。以上の結果は、骨芽細胞が陽極酸化チタンに接着し、そのチタン表面性状に対して反応することで直接石灰化が誘導されることを示す新たな知見である。
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