研究課題/領域番号 |
26870584
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
大林 真幸 昭和大学, 薬学部, 助教 (70349041)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 薬剤性肺障害 / 肺胞上皮細胞 / 薬物トランスポーター / バイオマーカー / 細胞障害 / EMT |
研究実績の概要 |
肺における薬物トランスポーターと薬剤性肺障害に関する知見は乏しい。これまでに我々は、肺末梢部位を構成する肺胞上皮細胞および肺線維芽細胞の役割に焦点を絞り、薬物トランスポーターを介したMTX誘発間質性肺炎の発症機序の解明を行っている。その結果、肺胞上皮細胞に特異的に発現が認められた organic anion transporter family (OATP) 4C1および肺線維芽細胞に発現する ABC transporter が肺障害発症の誘因因子である可能性を示した(Ohbayashi M et al., J. Toxicol. Sci., 38, 103-114, 2013)。そこで、本研究では特に肺胞上皮細胞に特異的に発現が認められたOATP4C1に着目し、薬剤性肺障害発症機序を明らかにすることを目的としている。
本年度は、まずヒト由来肺胞上皮細胞(A549)とマウス初代肺胞上皮細胞を用い、メトトレキサート(MTX)による細胞障害およびEMTへの影響について検討を行った。 1)96穴プレートに播種したA549細胞にMTX(0.01 micro M-100 micro M)で72時間処置した結果、濃度依存的に細胞障害を生じた。 2)マウス初代肺胞上皮細胞およびA549細胞にMTX 1 micro Mを添加したところ、EMT関連タンパク質であるE-cadherin の発現低下とα- SMAの増加、遊走能の亢進が認められた。このことから、MTXによってEMTが生じることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス初代肺胞上皮細胞およびA549細胞を用いたMTXによる細胞障害は、濃度依存性が認められた。また、MTXによって、EMTの特徴であるE-cadherinの低下、α-SMAの増加、遊走能の亢進、細胞形態の変化を確認することができた。一方、MTX誘発肺線維化モデルマウスを用いた検討において、モデル動物の作成およびin vivoにおけるOATP4C1のダウンレギュレーションの条件検討が計画通りに進まなかった。以上の理由をふまえて、本年度は OATP4C1 のダウンレギュレーションの条件検討を中心にMTXによる細胞障害発症機序におけるOATP4C1の役割を明らかにしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究推進政策は、A549細胞に発現するOATP4C1をダウンレギュレーションおよび強制発現系モデルを作成し、MTXによる細胞障害およびEMTにおけるOATP4C1の役割を明らかにする。また、in vivoにおけるOATP4C1のダウンレギュレーションモデルを用いて、MTXによる肺線線維化発症への影響についても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度計画していたMTX誘発肺線維化モデルマウスを用いた検討において、モデル動物の作成およびin vivoにおけるOATP4C1のダウンレギュレーションの条件検討が計画通りに進まなかったため、予定した研究費に差が生じた。平成27年度も引き続き検討を継続するため、一部研究費を繰り越して検討を行う。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究推進方策に基づき、OATP4C1のダウンレギュレーションおよび強制発現モデルを用いた検討に加え、肺線維症患者の肺組織サンプルを用いた検討を含めた研究費に充てる。また、平成26年度から継続して実施中であるMTX誘発肺線維症モデルマウスを用いた検討に係わる研究費については、継続課題であることも踏まえ、昨年度より繰り越した研究費で実施する。
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