研究課題/領域番号 |
26870586
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
的場 匡亮 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (50608669)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 病院経営 / 曜日 |
研究実績の概要 |
本研究は、病院が鉄道や航空輸送のように社会インフラとして365日フル稼働するための課題を整理すること、及びそれが実現した場合の効果を推計することを目的としている。本研究期間の初年度である平成26年度は、病院の曜日別稼働の現状を把握するための実態調査およびフル稼働するための課題についての事例調査を行った。 具体的には厚生労働省が行う医療施設(静態・動態)調査(平成23年実施)の結果を用い、病院の表示診療時間から曜日別の外来稼働状況を調査した。月曜日から金曜日の平日午前ではほとんどの病院が外来診療を実施しているのに対し、土曜日や日曜日、休日の午前では外来の実施率が低く、特に日曜日および休日に大きく診療機能が低下している実態が明らかとなった。また、各都道府県の医療情報提供ホームページの情報を用い、日曜日や祝日に外来を稼働している病院の情報の収集を開始した。 事例調査では日曜日や祝日も外来診療および定期手術を実施している病院の運営に参画し、運営上の課題について情報収集するとともに、その解決策についても検討をしている。また、日本マーケティング学会の医療マーケティングに関するセッションに参加し、成果の一部について発表するとともに、顧客志向経営や医療機関の経営に関する最新の研究の情報を収集した。 さらに、日本医療マネジメント学会学術総会に参加し、共同研究者として「 時間外選定療養費制度導入による影響(第二報)」を発表した。これは軽症患者が、土日祝日も含む診療時間外に受診することによる救急医療の負担過多への対策を評価したものである。 組織づくりや組織変革にかんする研究成果の一部をMedical Technology誌にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、文献収集、実態調査、仮説の設定、データ整理といった一連のプロセスがおおむね順調に進んでいる。研究計画段階では特定機能病院を対象としていたが、医療施設(静態・動態)調査を用いることにより広範囲の病院群を対象として調査をすることができた。また、医療情報提供ホームページの情報から日曜や休日に外来診療を実施する医療機関名を把握することが判明したことで、より詳細な調査ができるものと考える。一方で入院診療に関する情報はこれらの情報ソースからは得られないことから、別の手段を模索中である。 また、土日を週日化した運用を試み、また自らも運営に携わっている昭和大学江東豊洲病院が開設より1年経過したことによる365日稼働の成果や課題について、多くの情報を収集することができた。ここで得られた情報は、今後の研究の仮説形成に大きく寄与するものと考える。 上記の過程で得られた知見に基づき、さらなる研究を進め、学会での発表や論文の作成へと進めていければと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、前年度に開始した各都道府県の医療情報提供ホームページの情報の収集を継続する。この調査により日曜日や休日に外来診療を実施する医療機関が特定できることから、病院規模や診療内容、地域等による特徴が整理していく。また、入院診療に関する実態を把握する方法について、検討を進める。 また、曜日と医療提供について、患者が入院する曜日によって医療の質が異なるとする「Weekend Effect」という現象について、海外を含む多くの研究がなされていることから、文献調査をすすめる。 続いて、多くの病院で休日非稼働となっている医療サービスを稼働させる場合の阻害要因および、その対処策を検討するために、日曜祝日に外来診療を実施する病院への訪問調査を実施する。また、土日の週日化を試みる附属病院も実質2年目を迎えることから、昨年度に挙げられた課題への対処についても調査を行い、前述の訪問調査と合わせて365日稼働の阻害要因と対処策についての知見を深めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実態調査として、初年度に予定をしていた特定機能病院を対象とした質問票調査を実施せず、対象を広くとり、医療施設(静態・動態)調査・病院報告や医療機能情報提供制度などを活用した実態調査を実施した。そのため、本年度に計上をしていた謝金や通信費などを使用しなかったことから繰り越しが発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
日曜日に稼働をしている医療機関を特定できる方法が判明したことから、謝金等を活用して情報収集およびデータの整理を進める。その後、旅費を活用し、課題の抽出や対策の検討に必要となる訪問調査を進める。これらの実施によって、昨年度の繰越額を使用していきたい。
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