研究課題
2014.4-2015.3まで申請者はPACAPとその受容体の骨髄における場の全容を明らかにし、PACAPの骨髄における造血制御機構を明らかにするため、次の三つの基礎研究を行った。1.骨髄におけるPACAP受容体の解剖学的全容(場)の解明:骨髄におけるPACAP特異的レセプター(PAC1R)の遺伝子発現が骨髄に認められることを見出した。マウスの骨髄塗抹切片を用いた免疫染色によりPAC1Rが骨髄造血細胞に認められ、PAC1R陽性細胞はCD34、CD117、Sca-1の造血幹前駆細胞マーカーと共存することを見出した。PAC1Rの発現は未熟な骨髄細胞や成熟した細胞では極めて低いことからPACAP- PAC1Rシグナルは造血過程に関与する可能性を見出した。2.骨髄におけるPACAPの発現細胞の解明:リガンドであるPACAPの発現は極めて低レベルであるため、PAC1Rの発現が確認されている脛骨骨髄内に逆行性神経トレーサー(Fluorogold)を注入した結果、腰椎神経節の一部が陽性反応であった。これら神経節を組織免疫染色解析したところ、Tyrosine Hydroxylase(交感神経マーカー)及びPACAPの陽性反応が確認された。3. PACAPによる造血能の作用様式の解明:マウスの骨髄造血幹前駆細胞の比率をフローサイトメトリーで解析した。その結果、野生型マウスに比べて、PACAP KOマウスでは骨髄造血幹前駆細胞の割合が低かった。これらの結果より、PACAPは交感神経系から骨髄に放出され、造血機構の制御に関与していると示唆される。
2: おおむね順調に進展している
計画通り進展している。PACAP及びその受容体の骨髄における場の全容を明らかにし、PACAPの骨髄における造血機構の関与を示唆した。これらの結果は国内外学術会議に発表した。
PACAPによる造血幹前駆細胞の作用様式の解明: マウスの骨髄造血幹前駆細胞(CD34+/Sca-1+)をセルソーターにより分離、又はヒト臍帯血からの造血幹前駆細胞を用いて、造血幹前駆細胞の増殖及び分化に対するPACAPの役割をフローサイトメトリー及びCFU-assayにより調べる。さらに、PAC1Rのアゴニスト、アンタゴニストを用いて、造血幹前駆細胞に与える影響を確認する。次に、PACAP又はPAC1Rのアゴニストをマウスの腹腔内に投与し、造血幹前駆細胞の増殖及び分化を調べる。最後に化学的交感神経切除のモデルマウス(野生、PACAP遺伝子欠損マウス)を作製し、骨髄、脾臓および血中の造血細胞の存在比率を調べる。
ほぼ計画通り使用した。
様々なモデルマウスの作成
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 1件)
Chinese Journal of Information on Traditional Chinese Medicine
巻: 21 ページ: 46-48
10.3969/j.issn.1005-5304.2014.02.013
Journal of Molecular Neuroscience
巻: 54 ページ: 370-379
10.1007/s12031-014-0309-4