本研究の目的は、「ケータイメール」の代替手段として急速に普及しているインスタントメッセンジャーが、人のコミュニケーション能力や利用者間のコミュニケーション自体に与える影響を明らかにし、健全な利用や効果的な応用を目指すことである。 昨年度は、日本における利用率が9割に近いインスタントメッセンジャーLINEを対象に、その特徴や機能が与える影響について、画面インタフェースや社会心理学、情報社会学、非言語コミュニケーションやジェスチャー論の観点から明らかにした。これを実証するため、今年度はまずブレーンストーミング教育用のゲームを用いて、被験者にグループワークを行ってもらい、対面の場合とLINEを用いた場合での比較実験を行った。その結果、両者の協調作業には大差がなく、LINEを用いた場合でも対面に限りなく近いコミュニケーションが可能であることが分かった。 更に、本研究により明らかになった影響や効果を、研究代表者が取り組んでいる限界集落活性化事業に応用し、集落の方々と大学生のコミュニケーションの促進、および集落内でのコミュニケーションの活性化を図った。この実践結果を振り返り、「集落」のようなコミュニティも一種の「システム」であると捉え、「集落システム」を「活性化」させるための「情報」とはいかなるものかについて、上記の実験の分析から分かった結果を用いて明らかにすることができた。 その他、様々なステークホルダ間の関係性の分析や、ソーシャルメディア上における情報行動の分析、文化の普及過程の分析など、本研究の成果が幅広い研究に応用可能であることを示した。
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