研究課題/領域番号 |
26870591
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
長 友昭 拓殖大学, 政経学部, 准教授 (20555073)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中国法 / 不動産 / バブル / 予約契約 / 指導性案例 / 不動産法 / 公法と私法 / 農地 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究では、本研究の4つの法的視点のうち、特に不動産取引実務に関する研究で成果を残せた。 具体的には(1)不動産法における公法と私法の役割の比較法的研究として長友昭「建築基準法違反の建物の建築を目的とする請負契約の効力(最二判23.12.16)―不動産法上の契約の有効性と公序良俗の視点から」日本不動産学会誌28巻4号(2015年)を公表した。(2)中国不動産取引における一般的な契約形態の把握として、『中華人民共和国最高人民法院公報』2012年第11輯に掲載された不動産の予約契約をめぐる紛争事例を分析し、長友昭「不動産売買における予約契約の認定に関する事案―商品不動産家屋の予約契約をめぐる紛争事件」比較法学49巻3号(2016年)として公表した。(3)中国法で「判例」類似とも評される「指導性案例」の意義の研究として、長友昭「中国の不動産仲介契約における仲介排除の裁判事例について―指導性案例1号を中心に」拓殖大学論集政治・経済・法律研究18巻1号(2015年)を公表した。 このうち(2)(3)の研究については、研究協力者である西南大学の黄毅副教授から資料の提供及び助言を受けた。 海外調査として、台湾で、早稲田大学の楜澤能生教授、松山大学の加藤光一教授とともに農地制度の改革とその影響に関する聴き取り調査を行った。農地取引のあり方は不動産バブル生成とも重要な関係があり、台湾での経験が大変参考になった。また、北京市での資料収集を行った。北京大学の王成教授との不動産の責任負担をめぐる議論からは中国における不動産概念の再考にもつながる刺激が得られた。 不動産学会2015年度秋季全国大会で津市立三重短期大学の富田仁教授の報告「公有地信託と受託者の費用補償請求権」へのコメンテーターを担当し、日本の公有地信託と中国の集団所有地の信託に関する比較の可能性について貴重な示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不動産の取引の分析において、具体的な事例の収集および分析を行うことができており、その背景となる不動産政策についても研究を進められている。不動産バブルをめぐる政策や証券化の理論と事例については成果の公表までには至っていないが、中国での改革動向に沿って資料の収集は進めており、改革がさらに展開すれば分析を進めて研究が進展するものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度において、全国的な制度の分析を行ったので、平成28年度は、重慶市、厦門市、北京市、上海市などでの不動産証券化の改革動向および実際の不動産紛争事例の調査を行う。また、これまでに得られた関連の資料も多い。これらの契約書、登記証書、財産権証、事例などを分類・整理して公表する計画である。
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