研究課題/領域番号 |
26870593
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
松永 真理子 中央大学, 理工学部, 助教 (90507881)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | キラル選択性 |
研究実績の概要 |
研究実施計画に記したとおり,基板に多孔質Pt薄膜の成膜する際の電気析出条件の最適化を行った.成膜条件には基板の洗浄方法,基板のラフネス,析出電位,析出温度などを制御し,これらの影響を検討した.これらの比較検討は予想以上に時間がかかるものであったが,これらの実験によって構造安定性や対象分子電気化学活性,及びキラル分子を対象とした場合にはキラル選択性の発現の仕方も異なることが実証された.また,同条件で作製した電極についても対象分子をかえるとキラル選択性の発現の有無に違いが現れることも分かった.これらの結果から,特定の分子に対しキラル選択性が発現する条件を見出すことが出来たが,Ptを多孔質にした場合も感度向上(より低濃度での検出)については当初の期待通りの結果は得られなかった.しかしながら,多孔質Pt薄膜そのものでキラル選択性を報告した結果はこれまで報告が無いことなどから,本結果が今後の検討につながる有意義な成果であると言える.またこれらの成果を元に電気化学反応やキラル選択性発現機構を更に明らかにすることで,更なる成膜条件の最適化と感度の向上を目指す.なお,感度向上の観点などからPt以外の多孔質電極(キラル分子修飾および未修飾)を利用しキラル選択性の評価も開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多孔質形状でもPtのみでキラル選択性を有しうる条件を見出すことが出来た.またキラル選択性や感度は,成膜条件だけでなく対象分子によっても異なることを明らかにした.対象分子により結果が異なることを示す結果は今後キラル選択性の発現要因を議論していく上で非常に有意義な成果だといえる.一方,成膜条件の最適化には結果を再現よく得るための試行錯誤を行い予想以上に時間を使うことになった.また検出感度の向上に関しては十分な成果が得られていない.このようなことから平成26年度の研究実施計画に入れていた種々の電気化学的手法を有してキラル選択性の発現要因を突き止める研究については,着手したばかりである.一方,このような状況を受けて,PtのみならずAu等の異なる金属の多孔質膜を用いてキラル選択性の評価を開始し有益な成果が得られ始めている.これらの対策を経たことで,当初の計画通りかそれ以上の成果を平成26年度内に得られていると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今後はPtだけでなくAu等の他の金属種についても多孔質薄膜の材料として並行して検討していくことでキラル選択性発現要因の解明を進めるとともに,それらの成果を元にセンサ電極として検出感度の向上を目標として研究を進めていく.具体的には平成27年度前半の間にX線光電子分光法を使用し,金属の結合状態がキラル選択性に及ぼす影響を明らかにするとともに,電気化学計測技術によりキラル選択性発現時の電気化学活性分子の挙動を詳しく調べる.これらの成果の論文化も進める.後半には,これらの成果をもとに更に感度を向上するために当初予定していた磁場印可など成膜手法の向上に着手する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展を考慮し,1年目に小型グローブボックスを購入することを見送り,実験回数を増やすこと等に費やすこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は実験回数増大に向けて最も必要となる物品の購入に主に当てる.
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