金属の高指数表面は原子配列にキラリティを有しており,その表面は様々な有機分子のキラリティを識別できることが知られている.本研究ではこの高指数表面に着目し,高感度キラルセンサの設計指針を検討するものである.これまで多孔質白金電極を用い,電極上の電気化学反応を用いたキラル識別を検討してきた.対象物質には,生体内のキラル識別で重要な役割を果たすアミノ酸と電気化学的な識別で検討報告があるグルコースを用いてきた.電気化学反応は主にサイクリックボルタンメトリーを用いて評価を行っている.前年度までの研究において,注目した多孔質白金電極がアミノ酸やグルコースに対して,キラル識別能を有することを示し,再現性高く評価可能な測定環境をある程度確立した. 最終年度は,形態の異なる多孔質白金を複数作製し,グルコース存在時に見られる特定の電位付近の酸化ピークの電流密度の濃度依存性を評価した.全ての電極において,酸性溶液中でグルコース濃度が増加するにつれてピーク電流密度も増加し,その傾向はL型に顕著に表れた.また,L型とD型のピーク電流密度の差は粒子形状の多孔質白金が分散され固定された電極で最も大きくなった.なお,この電極は水素吸着波から算出される実効表面積が一番大きな電極であった.さらにDL混合溶液においてもL濃度比増大に伴い,ピーク電流値の増大が観測された.成果として,キラルセンシングの高感度化およびラセミ溶液中での利用の可能性を見出すことができた.
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