研究課題/領域番号 |
26870594
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
秋山 元英 中央大学, 理工学部, 助教 (90467697)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノチューブ / ドラックキャリアー / 遺伝子導入 / 交互積層法 / DNA構造体 |
研究実績の概要 |
本研究は、鋳型内交互積層法により、DNAとポリカチオンからなる多層膜構造のDNAナノチューブ(NT)を合成し、(1)複数の遺伝子を同時に細胞へ導入可能な遺伝子導入剤や、(2)DNA結合性抗がん剤のキャリアーとして応用することを目的としている。 (1)遺伝子導入剤への応用 遺伝子発現ベクタープラスミドDNA(pDNA)を用い、鋳型内交互積層法によりpDNA NTの合成を行った。ポリエチレンイミン(PEI)を多孔性ポリカーボネート膜の細孔内を通過させ、続いてpDNAを通過させた。この操作を繰り返し行い、最後に多孔性ポリカーボネート膜を溶解除去することでpDNA NTを得た。走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、均一な中空管構造をもつNTの形成が確認された。合成したpDNA NTでHeLa細胞を処理した結果、細胞内において明確なGFPの蛍光が観察された。このことより、pDNA NTは遺伝子導入剤として応用可能であることが明らかとなった。 (2)DNA結合性抗がん剤のキャリアーへの応用 PEIとサケ精液由来のDNAを用い、(1)と同様にDNA NTの合成を行った。合成したDNA NTに抗がん剤ドキソルビシン(Dox)を導入した結果、DoxはDNA層に効率よく結合し、水中に分散させたNTの体積内におけるDox濃度は極めて高いことがわかった。Dox導入DNA NT(DNA-Dox NT)でHeLa細胞を処理すると、DNA-Dox NTが細胞内に取り込まれ、抗がん活性を発揮することが確認された。その活性はDox溶液で処理した場合よりも高く、DNA NTが抗がん剤キャリアーとして有用であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに、pDNA NTを細胞に導入することで、目的の遺伝子を発現することに成功しており、研究計画に沿った順調な結果を得ている。また、DNA NTが抗がんキャリアーとして機能し、抗がん活性を発揮することを明らかにしている。研究計画において、DNA NTの抗がん剤のキャリアーとしての有用性の評価は、H27年度に予定していたものであり、既にその一部が達成されていることから当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
DNAナノチューブ(NT)の多層構造を利用し、遺伝子発現ベクターがコードする配列を各DNA層ごとに変えることで、細胞内に数種類の蛋白質を同時に発現させる。また、Doxに加え他の抗癌剤をDNA NTに導入することで、相乗的な効果による抗がん活性のさらなる向上を目指す。さらに、DNA-Dox NTの細胞に対する作用機序の詳細な解析も行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、本研究期間に使用する蛍光タンパク質発現ベクター数種類をH26年度にまとめて購入する予定であったが、進捗状況に合わせて購入するのが妥当だと判断し、その購入を一部にとどめた。これにより次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度においては、主に合成したNTの遺伝子導入剤や抗がん剤キャリアーとしての機能評価を行う計画である。そのため、数種の抗がん剤やH26年度に未購入分の蛍光タンパク質発現ベクター、さらに評価実験で使用する試薬・薬品類やプラスチック・ガラス消耗品などを主に購入する予定である。また、研究成果発表のために、学会参加費や旅費、論文投稿料などで執行予定である。
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