研究実績の概要 |
本研究課題では鋳型内交互積層法により、DNAとポリカチオンからなる多層構造のDNAナノチューブ(NT)を合成し、(1)遺伝子導入剤や、(2)DNA結合性抗がん剤のキャリアーとして応用することを目的とした。 (1)DNAナノチューブの遺伝子導入剤としての応用 分岐型ポリエチレンイミン(bPEI)とプラスミドDNA(pDNA)発現ベクターからなるナノチューブ(pDNA NT)を合成し、その詳細な構造を明らかにした。また、分子量(Mw)25,000のbPEIを用いpDNA NTを合成することで、pDNA NTによる細胞への遺伝子導入に成功した。通常、DNA NTの合成にはその構造安定性を高めるために比較的分子量の大きな(Mw: 750,000)bPEIを用い、構成成分同士の結合を強めている。一方、pDNA NTにおいては細胞内でpDNAをNTより効率よく解離させることが求められるため、より低分子量のbPEI(Mw: 25,000)が最適であったと考えらる。 (2)DNAナノチューブの抗がん剤キャリアーとしての応用 サケ精液由来のDNAを用い合成したナノチューブ(DNA NT)に抗がん剤ドキソルビシン(Dox)を結合させたDNA-Dox NTが、がん細胞に対して高い抗がん活性を示すことを明らかにした。その活性はNTに結合させたDox量に依存していた。細胞表面に結合したDNA-Dox NTはエンドサイトーシス経路により取り込まれ、酸性環境下にさらされることでDoxを放出することが明らかとなった。さらに、この放出効率はリソソームに存在するDNase II存在下でさらに亢進されることが示唆された。
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