研究課題/領域番号 |
26870595
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
中澤 隆 中央大学, 理工学部, 助教 (10709687)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イオン化率 / ICPMS / プラズマ / 単一粒子 |
研究実績の概要 |
ICPのプラズマ内に直接導入されたアブレート粒子の原子化・イオン化過程の改善の為に、装置開発を行った。レーザーアブレーション法によって発生させたアブレート粒子は、インパクターを用いて粒径1マイクロメートル以下にカットされ、さらに赤外加熱管の中で塩化水素ガスと混合させ、ICPへ導入された。塩化水素ガス発生装置に導入する塩酸の濃度を2, 3, 4 mol/Lと変え、さらにアブレート粒子と塩化水素ガスを混合する赤外加熱管の温度を200, 300, 400℃と変化させ、最適条件の検討を行った。導入する塩酸の濃度が2 mol/L及び赤外加熱管の温度が400℃の条件おいて、水蒸気を400℃の赤外加熱管に導入した条件と比較して、測定した元素の回収率が平均23%向上した。 赤外加熱管の中で塩酸と混合されたアブレート粒子をフィルター上に捕集を行い、SEM及びXPSを用いて分析を行った。SEM像から、得られた粒子の表面が、赤外加熱管に水蒸気を加えた時と比べて荒くなっていることが観察された。このことから、プラズマに導入されるアブレート粒子の表面積が増加し、アブレート粒子のプラズマ内での気化、原子化、イオン化が促進されたと考えられる。また、腐食により粒子の表面が壊れやすくなり、表面特性として脆弱性が増加したこともイオン化までの過程を促進する1つの要因と考えられる。XPS測定結果から、粒子表面の約25%が酸化物から塩化物へ変化していることが分かった。よって、塩化水素ガスをアブレート粒子と混合することで、アブレート粒子の酸化物の一部が塩化物へと置き換わる反応が赤外加熱管内で起こっていることが判明した。しかしながら、粒径1マイクロメートル以下の粒子に対し、XPSでは粒子表面から10ナノメートルほどの深さについてについて測定を行っているため、粒子の中心部分については組成が変化していないと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で開発された赤外加熱管に2M塩酸を導入し、アブレート粒子と混合させることで、ICP-MSで測定された元素の回収率が平均23%向上することが分かった。このため、プラズマへ導入されたアブレート粒子のイオン化率が改善されていることが確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
アブレート粒子の回収率の改善は、どこで起こっているかを突き止める。赤外加熱管の中でアブレート粒子が塩酸と混合したことによるものなのか、ICPのプラズマの中で酸化物及び塩化物イオンと検体イオンが平衡状態となることによって、イオン化率が改善しているのかを確かめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入に複数社から見積もりを取り、発注をかけたが、年度内の納品が間に合わなかったため。また、学会への出張も少なく、旅費に充てる費用が計画よりも少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果が学会で発表できる水準に達したので、学会参加のための旅費に充てる。また、論文投稿のための英文校閲費に充てることも計画している。
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