研究実績の概要 |
レーザーアブレーションで生成されたアブレート粒子に、導入経路の途中で2M 塩酸溶液を気化し、HClガスとして混合することで、超純水を混合した場合と比較して32% の増加率の向上が観察された。これは、粒子中の酸化物の一部がHClガスにより塩化物に変化したという組成の変化及び酸による腐食によって粒子の表面積の増加による表面の形状変化といった2つの要因により、アブレート粒子中に含まれる元素のイオン化率が増加したと考えられる。XPSの結果から、アブレート粒子と2M 塩酸を400℃の赤外加熱管で混合した際、Si については粒子表面の25 % が酸化物から塩化物に変化したと考えられる。また、塩酸濃度が4M, 6Mの場合、ロードエフェクトが生じ、増加率は低下した。さらに、赤外加熱管の温度が高いほど、増加率が上昇し、加熱管の温度が400℃の時、200℃に対して35 %上昇することが分かった。赤外加熱管の温度については酸化物の融点に関係した元素依存性があることが分かった。 アブレート粒子に2M 塩酸を400℃の赤外加熱管で混合し、サンプリングデプスを8.9 mmに設定し測定を行った際、全ての測定元素について、回収率はHClガスを粒子に混合させた場合では超純水を混合させた場合と比較して平均23%増加した。酸化物の融点の低い元素についてはサンプリングコーンの手前で拡散が生じることで、回収率が低下した。しかし、サンプリングデプスを近づけることで、回収率は改善された。このことから、本手法を用いることで、プラズマへ導入される1μm以下の粒子が、プラズマ内で効率よく原子化、イオン化されるようになったと考えられる。本手法を用いる際、酸化物の融点の低い元素は拡散の影響を受けることに気を付ける必要がある。
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