研究課題/領域番号 |
26870596
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
石黒 彩 帝京大学, 医学部, 助手 (90709693)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 災害 / コミュニティ / ジェンダー / 脆弱性 / エンパワーメント / 健康・生活問題 / 国勢調査 / 死亡率 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、コミュニティにおける女性のエンパワーメントが、災害に対するレジリエンス(回復力)構築に重要であることを、東日本大震災で被災した宮城県石巻市における在宅被災世帯を対象とした調査から明らかにすることである。
平成26年度は、(1)各コミュニティの特徴と災害リスクの整理 (2)災害リスクのジェンダー格差の分析 (3)災害に強いコミュニティを作る手法の検討 を行った。 (1)各コミュニティの特徴を震災前の国勢調査のデータを使用し整理し、災害後に健康・生活問題を多く抱えるコミュニティの同定方法を検討した。結果はDisaster Med Public Health Prep. 2015;9(1)に学術論文として発表した。また、各コミュニティの死亡率と津波の浸水深の関連について学術論文として現在投稿中である。 (2)災害リスクのジェンダー格差を、まずは死亡率について検討した。東日本大震災で犠牲になった約2万人の中で女性の死亡者数は男性よりも約1,500人多く、宮城県石巻市における死亡率の検討でも若年層・生産年齢層の死亡率は女性の方が高く女性の脆弱性が示唆されたが、逆に高齢者層の死亡率は男性の方が高い傾向を認めた。今後、災害後の健康・生活に関する問題についてもジェンダー格差の検討を行う。 (3)石巻市で2013年に実施されたコミュニティ再生支援活動の評価を行った。お茶のみ・料理・小物作りなどのイベント参加者は、非参加者に比べ主観的健康感が改善する可能性が示唆された。第73回日本公衆衛生学会総会にて報告し、現在論文作成中である。また、石巻市社会福祉協議会の協力のもと、地域支援専門職への聞き取り調査からコミュニティ・エンパワーメントに果たす役割を明らかにする質的研究の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずは各コミュニティの特徴と災害リスクの整理を行い、震災前のコミュニティ特性から災害後に健康・生活問題を多く抱えるコミュニティ(disaster-vulnerable communities)の同定方法の検討、さらに有効なコミュニティ支援の方法の検討について成果をあげることができた。 災害リスクのジェンダー格差についての検討は現在進行中であるが、今後Women’s Healthの分野で世界的に先駆的立場にあるMonash大学Jean Hailes Research Unitの助言を得る予定であり、研究は順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)各コミュニティの特徴と災害リスクの整理については、現在投稿中である論文の発表を目指す。 (2)災害リスクのジェンダー格差の分析については、今後は死亡率だけでなく災害後の健康・生活に関する問題についても検討し、ジェンダー格差が生じる要因を分析する。Monash大学Jean Hailes Research UnitよりWomen’s Healthについての協力・助言を得て結果をまとめ、学会発表や学術論文への投稿を行う予定である。 (3)災害に強いコミュニティを作る手法の検討については、コミュニティ再生支援活動の評価について、学術論文として発表する。また、地域支援専門職への聞き取り調査を実施し、コミュニティづくりに必要な要素を、特にジェンダーの視点から質的分析を用いて明らかにする。 すべての研究の成果は学術誌での公表にとどまらず一般に広めることができるよう、プレスリリースや一般のシンポジウム等での情報の公開を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度には主に論文執筆、学会等に参加し情報収集を主に行ったため、調査実施場所である宮城県石巻市への旅費が当初の予定よりも下回った。 また、物品費も当初の予定より安価に抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には、宮城県石巻市におけるインタビュー調査を計画しており、申請者の旅費および調査に必要な人件費として使用する予定である。また、分析・論文作成においてはMonash大学Jean Hailes Research Unitの助言を得る予定で、オーストラリア メルボルンへの旅費として使用する予定である。
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