最終年度は、これまで検討してきたグルコース飢餓以外にアミノ酸飢餓や低接着培養条件といった、他のがん微小環境ストレスについて検討を行った。昨年度の研究で得られた結果から、グルコース飢餓による低栄養環境はLKB1/AMPKを活性化し、細胞内品質管理機構として知られるオートファジーを介して酸化ストレス応答を担うことを明らかにした。一方で、アミノ酸飢餓により、オートファジーの顕著な活性化は認められたものの、その活性化にLKB1/AMPKはほとんど関与しないことが分かった。さらに、アミノ酸飢餓によるオートファジーは、分解標的に選択性が認められないことから、グルコース飢餓はアミノ酸飢餓と異なった特異的なオートファジー制御機構の存在が示唆された。次に、足場非依存性におけるストレス応答を介した悪性化機序を検討したところ、低接着培養条件下で著明なNrf2の核内蓄積を認めた。また、Nrf2の標的となる生体防御遺伝子群の誘導が確認できたことから、足場非依存性の生存においても酸化ストレス応答ががん細胞の悪性形質獲得に関与していることが考えられた。
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