研究課題/領域番号 |
26870603
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
相澤 伸依 東京経済大学, 経営学部, 准教授 (80580860)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生命倫理 / バースコントロール / 避妊 / 中絶 / リプロダクティブライツ / フランス |
研究実績の概要 |
本研究は、20世紀後半の経口避妊薬受容をめぐる言説を分析することによって、日仏の女性の身体観およびその差異を明らかにする比較思想(史)研究である。 本年度は、日本における経口避妊薬受容言説について、検討を行った。文献調査の主な対象としたのは、1970年代のウーマンリブの言説である。日本の女性運動はピルの受容について非常に抑制的であったというのは、すでに多くの研究が指摘するところであるが、そのような態度がいかなる論理に基づいていたのかを改めて検証した。その結果、ウーマンリブはピル受容をめぐる議論を通して、(1) 自然な「自己」でいることに価値を置き、自己とは何なのか、そして自己と身体の関係はいかにあるべきかという問いと格闘していたこと、(2) 避妊の負担と責任を誰が負うべきかを問い、男女の力関係を問題化していたとの知見を得た。この成果を研究会で発表し、そこでの質疑をふまえて論文にまとめた。この論文は、平成27年度出版の論集に掲載予定である。 上記ウーマンリブの分析と平行して、フランスのバースコントロールの歴史について文献調査を行った。この予備調査をふまえて、平成27年度は、フランスにおけるピル受容言説について詳細な分析を行う予定である。日本とは対照的にフランスでは、フェミニズム運動の中でピルを積極的に受容する態度が見られる。それゆえ、両国の歴史的・社会的文脈を踏まえつつ、この差異の由来を検討することが課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の研究は文献調査に終始し、学会での口頭発表および論文という形で成果発表する機会を作れなかった点で、研究の進行はやや遅れている。本年度の成果は、平成27年度に論集への投稿という形で発表する。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、フランスに長期滞在し、フランスにおけるピル受容言説について詳細な分析を行う予定である。長期滞在の利を活かし、文献調査のみならず、インタビューなどを通して生の言説を収集することを試みたい。 なお、本課題の主たる目的は日仏身体観の比較であるが、本年度の研究を通して、ピル受容をめぐっては自己観やジェンダー観も大きな影響を及ぼすことがわかった。このような側面にも留意して、今後の研究を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度夏に行ったフランスでの文献調査費用を、他研究費でまかなうことが可能になったため、その予算が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度の繰り越しおよび平成27年度の助成金は、主にフランスにおける調査に使用する予定である。当地での文献複写、文献購入、旅費が主な使途である。
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