本研究は、1970年代の日本とフランスにおける経口避妊薬(ピル)の受容について分析を行い、両国における身体観の差異を明らかにすることを試みた。当時の女性たちの言説を分析した結果明らかになったのは、大きく次の二点である。日本においては、身体を自然なままにしておくことや身体と自己の切り離せなさを重視する傾向があり、結果としてピルのような薬による介入の受容に消極的であった。一方、フランスでは、身体は自己のものであり自由に処理できる対象であるとの考え方が強力であり、ピルも身体コントロールの手段として積極的に受け入れられた。本研究を通じて、以上のような日仏における身体観の差異を明らかにした。
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