歯科医療におけるジルコニアの臨床応用にはCAD/CAM 技術の応用が不可欠である。その加工精度と時間は被削材料の性質に依存する部分が大きく、現在広く流通しているイットリア安定化ジルコニア(Y-TZP)の大部分は低密度焼結体を切削後、高密度に焼結するシステムである。一方、Y-TZP 以上の優れた機械的性質を示し、表面処理後も十分な強度を有するCe-TZP /Al2O3 ナノ複合体(NANOZR) はY-TZP 以上の臨床有用性が期待されるジルコニアであるが、高密度焼結体の切削を基本とし、その硬さゆえ切削効率の低さが欠点であ る。最終的な機械的強度が十分なら、低密度焼結体を切削後に高密度に焼結した方が効率的である。そこで、本研究は、異なる焼結状態で切削加工したNANOZRの疲労耐久性を明らかにすることを目的とし実験を行った。その結果、 NANOZRの二軸曲げ強さは、焼成過程による違いはなかった。一方、表面処理による影響はあったが、表面処理を行っても1000MPa以上を有することが示された。また、すべての条件で1000000cycle、480MPa以上の繰り返し疲労強度を有することが確認された。このことから、NANOZRは焼成過程、表面処理に関わらず、繰り返し疲労強度がISO13356の外科用インプラントの基準である320MPaの1.5倍以上有することが示された。以上より、NANOZRは半焼結体を切削加工後に本焼結を行っても補綴材料として臨床応用上問題ない強度および疲労耐久性を有することが示された。
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