研究課題/領域番号 |
26870608
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
高木 幸子 東京女子大学, 人間科学研究科, 研究員 (60638782)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 共感性 / 感情 / 対人コミュニケーション / 表情 / 音声 |
研究実績の概要 |
日常的なコミュニケーションにおいて相互支援的な社会が形成されるためには、他者に共感を示すことと同様に、他者から共感を得ることも非常に重要である。共感性や社会的能力についてのこれまでの研究は、主に他者の感情知覚の適切さに焦点を当てていたが、本課題では感情表出に焦点を当てて研究をすすめている。これまでの研究から、基本感情(喜び・怒り・悲しみ・嫌悪・驚き・恐怖)を示す表情と音声の組み合わせから、より高次で複雑な感情(罪悪感や困惑など)が知覚されることが明らかになっている。本課題ではこれまでの研究を発展させ、高次感情の表出と知覚の関連性を確認した上で、他者からの共感を引き出しやすい表情と音声による感情表現はどのようなものかを検討する。上記の目的にともない、平成26年度は以下2つの研究をおこなった。
<研究1:高次感情の表出と知覚の関連性の研究>日常のコミュニケーションでは、感情は概念、表出、知覚といった様々な側面から検討されている。本研究では、6つの高次感情(興味・困惑・罪悪感・恥・嫉妬・軽蔑)について、これらの側面を同質として扱ってよいのかを検討した。実験の結果、ある高次感情を示す表情と音声の組み合わせは、表出と知覚で傾向が異なることがわかった。ゆえに、感情知覚の適切さではなく、表出に焦点を当てて共感性を検討することには意義があると考えられる。
<研究2:刺激の収録>共感性の検討に先立ち、実験で使用する刺激の収録をおこなった。モデルは女性10名であり、4つの社会的状況においてそれぞれ中立的なセリフをポジティブもしくはネガティブな感情をこめて発話してもらった。評価実験の結果、8名のモデルの演技を採用することとした。また、8名の演技について、顔と声の感情価を入れ替える編集加工を施し、顔と声の感情価が一致した刺激および一致していない刺激を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共感性の検討に用いる刺激セットは作成したものの、これらを使用し、どのような表情と音声を組み合わせた場合に、好感度が高く、共感に基づいて支援したくなる感情となるのかを検討するという一年目に計画していた実験が途中までしか実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
作成した刺激セットを用いて、表情と音声の感情価の組み合わせごとに(a)どの程度共感できるか、(b)支援の必要性をどの程度感じるか、という2つの指標に関する評価が、社会的状況に応じてどのように変化するかを検討する。この実験から、状況に応じてどういった感情表現が他者の共感性を引き出しやすいのかを明らかにする。また、実験参加者の共感性の高低による評価の違いも検討する。 また、感情価に加え、感情強度の違いが上記2つの評価に及ぼす影響について検討する実験をおこなう。表情と音声の感情価が同じ組み合わせを提示した場合でも、それぞれの感情表出の強度が異なる場合には(a)および(b)の評価は異なる可能性がある。感情価の組み合わせと、感情強度の組み合わせの両方を検討することによって、他者の共感性を引き出しやすい感情表現の特徴をより詳細に把握する。 実験成果については、日本心理学会および日本社会心理学会において発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用刺激セット収録のため購入予定だった機材が廃盤となり、他機種の見積もりの結果予算額を大幅にオーバーしてしまい、購入に至らなかった。また、データ解析用PC購入も当初の予定より遅くなった。
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次年度使用額の使用計画 |
実験で取得したデータおよび収録刺激の編集のため、高性能PCと音声処理ソフトウェアを購入する予定である。また、研究成果の学会発表および論文投稿のための経費を計上する予定である。 また、次年度は複数の実験を実施予定であるため、100人規模で被験者を募る。その際、謝金を支給する予定である。
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