研究課題/領域番号 |
26870612
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
輪島 丈明 東京薬科大学, 薬学部, 助教 (00516669)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肺炎球菌 / 莢膜型 / ワクチン / 形質転換 |
研究実績の概要 |
肺炎球菌の多剤耐性化が問題となっている。本研究は、肺炎球菌が持つとされている自然形質転換能および、突然変異獲得能を定量し、薬剤耐性化との関連を明らかにすることを目的としている。 本年度はまず、研究協力機関より2009年から2014年までに分離された肺炎球菌臨床分離株を収集し、形質転換能および突然変異獲得頻度を測定することにより、これらの能力が高い株のスクリーニングを行った。すなわち、臨床分離株中からランダムに菌株を選択し、レボフロキサシン、リファンピシン、ストレプトマイシンを添加した血液寒天培地に塗抹し、変異獲得頻度を測定した。また、マクロライド、フルオロキノロン耐性株のゲノムDNAを用い、形質転換による耐性獲得頻度を測定した。 その結果、コントロールであるS. pneumoniae R6株と比較すると変異頻度には大きな差が認められなかった。一方で、形質転換頻度が10~100倍高い株が複数認められた。これらの株に対し、治療抗菌薬12薬剤に対する薬剤感受性、莢膜血清型、Multilocus sequence typingによるSequence type(ST)の比較を行った。これらの株は、莢膜型およびSTに偏りは認められなかったのに対し、すべてがペニシリンに中等度または耐性を示していた。以上より、形質転換能が高い株は、ペニシリンに耐性化しやすいことが示唆された。 また、形質転換に関与していると考えられるcom遺伝子群の塩基配列を解析した。その結果、形質転換能が低い株およびR6株では認められなかった変異が複数認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床で分離される肺炎球菌の中に、変異獲得頻度は大きく変わらないものの、形質転換能が高い株が一定の割合で存在していること、また、それらの株はペニシリンに対し感受性が低下していることが明らかとなった。さらに、この形質転換能はその株がもつSTや莢膜型に左右されないこと示唆された。 また、現時点での関与の有無は不明であるが、高形質転換能を持つ株に共通して認められるアミノ酸置換を伴う遺伝子変異が認められた。 以上のことから、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
菌株の収集は継続して行い、形質転換能が高い株のスクリーニングも継続することで、高形質転換能を持つ株の動向調査を行う。また、形質転換能に関与すると考えられる他の遺伝子群についても網羅的に解析を行う。同時に、高形質転換能を持つ株で共通に認められたアミノ酸置換を伴う遺伝子変異を、感受性株に導入し形質転換能との関係について解析を行う。 これらのデータを基に、薬剤耐性化と形質転換能に関して関連を考察する。 抗菌薬感受性および莢膜型の経年変化については、アンチバイオグラムやワクチン効果に関する情報を含むため、連携機関にフィードバックを行い、臨床に情報を還元する。
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