研究課題/領域番号 |
26870614
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
長島 駿 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (40634465)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 小胞体 / MAM / MITOL |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアはエネルギー産生などを担う重要な細胞小器官である。ミトコンドリアに異常が生じるとアルツハイマー病を含め、様々な病気を発症することが知られている。近年の研究では、ミトコンドリアと小胞体の接着点であるmitochondria-associated ER membrane (MAM)がミトコンドリアのダイナミクス、アポトーシス、オートファジーなどの様々な機構に関与することが明らかとなり、注目を集めている。このMAMがアルツハイマー病の患者脳で増加することが報告され、アルツハイマー病とMAMの関係が示唆されている。 本研究グループはミトコンドリア外膜に局在するユビキチンリガーゼMITOLを同定した。さらにMITOLはMAMの形成を担うMfn2を介してMAMの形成を制御することが明らかとなった。MAMの機能を解明するために、MAM制御因子であるMITOLを大脳皮質、海馬特異的に欠損させたMITOLノックアウトマウス(MITOL-eKO)を作製した。まず、MAMが神経の発生や神経細胞の移動に必要であるか検討を行った。Nissel染色やクリューバレラ染色を用いて解析した結果、MITOL-eKOの脳の層構造や軸索について大きな変化は認められなかった。しかしながら、胎生期のMITOL-eKOを層構造のマーカーを用いて解析したところ、大脳皮質の層構造に乱れが認められた。また、細胞死について検討した結果、MITOL-eKOでは有意に細胞死の亢進が認められた。さらに生後1年経過したMITOL-eKOをBarnes mazeテストを用いて記憶能力を比較した結果、MITOL-eKOは記憶能力の低下が認められた。以上の研究結果より、MAMの減少は細胞死や個体の記憶能力の低下を引き起こすことから、アルツハイマー病におけるMAMの増加は細胞や個体を保護するために機能することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題の研究目的はマウスの脳におけるミトコンドリアと小胞体の接着点であるmitochondria-associated ER membrane (MAM)の機能解明、さらにアルツハイマー病におけるMAMの機能解明である。MAM制御因子であるMITOLを欠損したマウスを用いてMAMが減少したマウスの表現形の解析を行い、MITOL欠損マウスにおいて神経細胞死の亢進などのアルツハイマー病に似た表現形が認められた。さらにMITOLを欠損したアルツハイマー病モデルマウスの作製に成功した。しかしながら、MITOLを欠損したマウスやMITOL欠損したアルツハイマー病マウスの解析時期が生後6ヶ月および生後1年など日数を要するため、十分な解析数が得られてない。今後はMITOL欠損アルツハイマー病モデルマウスの解析数を増やし、脳におけるMAMの機能およびアルツハイマー病におけるMAMの機能解明の分子メカニズムを試みる。
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今後の研究の推進方策 |
本申請課題の今後の推進方策は大きく3つのテーマにわけて行う。1つ目は脳におけるMAMの機能解析、特に大脳皮質におけるMAMの機能解明に取り組む。2つ目はアルツハイマー病におけるMAMの機能解析を行う。3つ目はマウス繊維芽細胞を用いたMAMの解析を行う。1つ目の脳におけるMAMの機能解析についてはいくつかデータが得られていることから、今後は再現性やさらなる解析を進める。2つ目はMITOL欠損アルツハイマー病モデルマウスの作製が確認されたことから、個体数を増やし解析に取り組む。3つ目は細胞死とMAMの関係が見出されことから、細胞死におけるMAMの関与の分子メカニズムの解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた旅費としてしようしなかったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費および実験動物(マウス)や消耗品として使用する予定である。
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