研究実績の概要 |
感染がおこり、免疫応答反応がおこると、感染微生物に由来するタンパク質は腫瘍組織適合抗原(MHC)とともに抗原提示される。そして、MHC クラスI (HLA-A, HLA-B, HLA-C分子等含む)とクラスII (HLA-DR, HLA-DQ, HLA-DP分子を含む) いずれもが、免疫系による抗原の認識、ひいては感染性微生物を排除し、生体を防御する上で必須の役割をはたしている。 しかし胎盤のトロホブラスト上にはHLAの古典的クラスI抗原もクラスII抗原も発現しておらず、そのかわりにHLA抗原としてHLA-G等が発現している。母体免疫細胞と直接接するトロホブラスト上に、多型性の乏しいHLA-Gが発現することで、母体の免疫細胞から「異物=他」と認識されないように働いているとも考えられている。一方で、母体血漿には自身由来のRNA断片のほかに胎児胎盤由来のcell free RNA断片が出現する事が知られている。本研究では、母体血中RNA断片を利用して胎盤関連疾患などの様々な病態との関連を検討することを目的とする。 本年度は昨年に引き続き、胎児由来のRNAをもとにした胎児ストレスの診断のために、母体血中からTotal RNAを抽出、逆転写してcDNAを作成、Taqmanアッセイプローブを用いてリアルタイムPCRを行った。しかし母体血漿でのRNA抽出や目的の遺伝子発現量定量の技術確立に苦慮し、評価が困難であった。そこで、まずRNAを用いた検討の参考にするために、胎盤を用いて病態に応じたHLA蛋白発現の差を観察して検討し、研究を進めている。
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