研究課題/領域番号 |
26870624
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
林 昌子 日本医科大学, 医学部, 講師 (80421171)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | cfRNA / HLA遺伝子 / HLA蛋白 |
研究実績の概要 |
免疫応答反応が起こると、感染微生物に由来するタンパク質は主要組織適合抗原(MHC)とともに抗原提示される。そして、MHCクラスI (HLA-A、HLA-B, HLA-C分子等含む)とクラスII(HLA-DR, HLA-DQ,HLA-DP分子を含む)いずれもが、免疫系による抗原の認識、ひいては感染性微生物を排除し、生体を防御するうえで必須の役割を果たしている。しかし胎盤のトロホブラスト上にはHLAの古典的クラスI抗原もクラスII抗原も発現しておらず、そのかわりにHLA抗原としてHLA-E、HLA-F、HLA-G等が発現している。一方で胎盤以外の母体組織にはHLA-E、HLA-F、HLA-Gの発現は少ない。従って、胎盤の感染や免疫関連疾患により、胎盤のHLA-E、HLA-F、HLA-Gが何らかの反応を示し、これを反映して母体血中のHLA-E、HLA-F、HLA-Gに関連するcfRNAが変化している可能性が考えられる。本研究では胎盤の感染や免疫に関連すると考えられる疾患において、胎盤のHLA-E、HLA-F、HLA-G蛋白や、母体血中cfRNAの変化を利用し、臨床での評価に応用することを目的としている。 本年度は、前置胎盤、癒着胎盤、妊娠高血圧症候群の胎盤、臍帯、羊膜を収集し、HLA-E、HLA-F、HLA-G蛋白を免疫染色した。その結果、HLA-EとHLA-Fについては各病態で免疫染色の染色状況に差がなく、病態との関連性は低いと考えられた。HLA-Gについても臍帯や羊膜における染色状況は病態により変化が無かったが、胎盤に関しては病態によっては染色パターンが異なり、病態とHLA-Gとが関連する可能性も示唆された。しかし、用いた対象症例数が少なく(N=1~3)、個体差である可能性も考えられた。今後症例数を増加させ、再評価を行った上で論文にて発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初母体血中cfRNAの回収を試みたが、RNAが不安定な物質であり、RNAの安定的な抽出に至らなかった。そこで、胎盤の蛋白発現に立ち返って評価をし、病態とHLA蛋白発現の程度や部位からcfRNAの存在の推定を行うことを優先したため。
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今後の研究の推進方策 |
現在胎盤のHLA染色を進めており、病態に応じた染色パターンの変化の有無を評価している。結果により、母体血中cfRNAの評価に繋げられるか検討し、必要であれば血中RNAの評価を追加する。この期間中に論文作成を行い、学会での発表を経て研究期間を終了したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
該当疾病は比較的まれな疾病であり、対象症例を集めるのに時間がかり、来年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は研究の最終年度である。平成28年度に胎盤染色での変化を見いだせたため、症例を追加して再検討するために費用を要する。また、結果発表のための論文作成や報告書の作成に費用を要する予定である。
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