研究課題/領域番号 |
26870624
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
林 昌子 日本医科大学, 医学部, 講師 (80421171)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 胎盤 / HLA遺伝子 / HLA蛋白 |
研究実績の概要 |
胎盤は他の多くの臓器と違い、主要組織適合抗原(HLA)クラスIaの発現は認められず、代わりにクラスIbが発現していることが知られている。一方で、母体由来の臓器にはHLAクラスIbを多く発現している部位はないと考えられる。HLAクラスIbにはHLA-G,E,Fが存在し、母体の中に在る半異物である胎児や胎児付属物などが非自己として認識されることを防ぐ、すなわち免疫寛容のために働いていると言われている。本研究では胎盤の状態とこれらのHLAクラスIbとの関連を調べ、母体血中に存在するHLAクラスIb由来の物質から胎盤の状態を推定する方法を模索すべく検索を行った。前年度までは母体血中に存在するHLAクラスIb由来のRNA断片を調べるために調査を行ったが、RNAの安定性が低く、十分な結果が得られなかった。そこで、様々な胎盤が関がわる妊娠合併症の分娩後の胎盤について、HLAクラスIbの染色を行った。その結果、HLA-EとHLA-Fについて染色した結果は各病態で差が無かったが、HLA-Gについては胎盤の病態により差が認められた。HLA-G陽性の細胞は、胎盤の基底面に認められるほか、子宮全摘まで行った症例では同様の形態の細胞が子宮筋層にも認められ、病態との関連について更なる調査を要する結果であった。これまでのHLA-Gに関する文献を調査したところ、可溶性HLA-Gと腫瘍との関連を示唆している報告もあり、一方でに胎盤と腫瘍の類似性について免疫寛容の面から調査報告されているものも存在した。文献的考察によれば、腫瘍性疾患でHLA-G血中濃度の上昇を認めるものがあり、母体血清中のHLA-G濃度の検討も必要であると考えられた。HLA-Gと疾患の関連について検討するには更なる症例数の追加が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では母体血中RNAを用いて胎盤特異的な蛋白に関連する疾患を特定するバイオマーカーの開発を目指していたが、母体血中RNAの保存が困難で、日常臨床で取り扱える範囲での母体血中RNA保存が困難だということが判明し、研究方針を見直す必要が生じた。そこで、まず胎盤に発現する蛋白を定量的に評価することを検討し、さらには、血中蛋白をバイオマーカーとして利用できるか検討する方向に方針転換を行ったため。
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今後の研究の推進方策 |
胎盤に発現する蛋白を定量的に評価し、胎盤の病態とHLAーGとの関連を検討する。症例数が少ないため、検討できる検体が研究期間中に十分な数が得られる可能性は低いが、これまでに経験した症例の中で胎盤が保存されているものについて、HLA-G蛋白発現についてHLA-Gの免疫染色や細胞形態、胎盤由来の細胞の分布等を検討して各病態とHLA-Gとの関連を調査する。さらに、文献的考察を追加して今回得られている結果と照合し、妥当性のある結果であることを確認する。一方で妊婦の採血検体を用いて、HLA-Gの正常値を求め、さらに、該当症例が存在した場合は、HLA-G蛋白量の差を検討し、血中蛋白をバイオマーカーとして利用できるか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までに計画していた母体血中RNA断片を用いた研究にて良い結果が得られず、得られた結果をもとに論文を作成し、発表する予定であったものがかなわず、残ってしまったため。来年度英文査読や論文掲載料のために残金を使用する予定である。
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