研究実績の概要 |
これまでの研究では、HLA-Gが免疫寛容を担い、理論的には癒着胎盤の発生に寄与し得ると示唆されていた。しかし、癒着胎盤とHLA-Gとの関連を明らかにした研究はほとんどない。そこで、今回の研究でその関係を明らかにするための検討を行った。 対象は、2006年と2018年の間に当院で分娩した臨床的に明らかな癒着胎盤の症例 (癒着胎盤群)と、2016年から2018年の間に出産した胎盤関連の合併症のない症例(対照群)とした。対象症例の胎児付属物(胎盤・臍帯・卵膜)は、分娩直後に最低でも5か所(臍帯付着部の胎盤、臍帯、羊膜、その他取扱者の任意の胎盤2か所以上)から、パラフィン包埋の検体を作成して保存してあった。これらの検体について抗HLA-G抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、検討した。2人の検者により、全ての検体を評価し、最もHLA-G陽性割合の高い部分を決定し、評価した。評価は、2人の検者によって別々に行った。HLA-G陽性領域は、HLA-G proportion score 1(0-20%)、2(21-40%)、3(41-60%)、4(61-80%)、および5(81-100%)としてスコアリングした。2人で各々評価したスコアの平均値を分析に使用した。 研究期間中、癒着胎盤群に8症例、対照群に14症例の症例が得られた。HLA-G proportion scoreを癒着胎盤群と対象群で比較すると、胎盤増加群の方が対照群の場合よりも有意に高かった(median 3.25, range 2.5 - 4.5 vs. median 2.0, range 1 - 3.5, p <0.01) 今回の検討の結果は、HLA-Gタンパク質の発現が癒着胎盤と関連があることを示唆している。しかし、HLA-Gと癒着胎盤の発生に寄与するメカニズムを直接調査したものではなく、今後さらなる研究が必要である。
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