研究課題
臓器移植医療においてはドナー臓器不足が世界的な問題である。一つの解決策としてブタの臓器を用いる異種移植が提唱されているが,免疫拒絶という障壁の克服が最重要課題となっている。異種臓器に対し最初に誘導される超急性拒絶は,α1,3ガラクトース(αGal)抗原が引き金となって起きることが知られている。我々は既に,この抗原を発現しないα1,3ガラクトース転移酵素遺伝子ノックアウト(GalT-KO)ブタを体細胞核移植法によって作出,維持している。本研究では,超急性拒絶誘導のもう一つの要因とされるHanganutzu-Deicher (H-D)抗原を除去した遺伝子ノックアウト(KO)ブタの作出を目的とした。H-D抗原の除去には,Cytidine monophosphate-N-acetylneuramic acid hydroxylase (CMAH)遺伝子のKOが必要とされる。平成27年度の研究内容を以下に要約する。1. GalT/CMAH-KOクローンブタの作出: 前年度に樹立したGalT/CMAH-KO細胞から作製した核移植胚を1頭の借腹豚に移植した結果,4頭のクローンブタが作出された。4頭のうち,2頭は母豚による圧死,1頭は虚弱であったため2日齢にて犠牲死し臓器のサンプリングを行った。残る1頭は生存し,育成した。得られた全ての個体は核ドナー細胞と同じ変異を有していることを確認した。2. 作出したクローンブタの解析: 犠牲死した産仔の臓器(心臓・肺・膵臓・腎臓)の組織標本を作製し,αGal抗原ならびにH-D抗原の免疫染色を行った。その結果,これらの臓器においてGalT/CMAH-KOクローンブタでは,両抗原ともに消失していることが確認された。さらに,育成中の産仔より血液を採取し,顆粒球における両抗原の有無をフローサイトメトリー解析したところ,同様に消失が確認された。
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Journal of Reproduction and Developmenet
巻: 61 ページ: 449-457
http://doi.org/10.1262/jrd.2015-058
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