高齢者や子供の歩行中のハザード知覚特性を明らかにするために,70歳以上の高齢者と小学生20名にハザード検出課題を課した.具体的には,歩行者視点(高齢者用地上高160cm,小学生用地上高110cmで同時撮影)の交通環境の画像20場面をタブレット端末上に提示し,見なければいけないところ,危険だと感じるところをなるべく早くタッチするよう求めた.刺激の提示時間は1場面あたり7秒間とした.この結果を昨年度取得した20歳から60歳までのいわゆる大人のデータと比較した. 記録されたタッチの座標から実験参加者が何をタッチしたのかを割り出した.タッチされた対象は顕在ハザード,潜在ハザード,その他の3つに分類し実験参加者ごとに合計した.実験参加者の属性とハザードの分類を要因,ハザードの平均タッチ数を従属変数として分散分析と多重比較を行った結果,高齢者は大人に比べて潜在はザートの指摘個数が少なく,大人は子供や高齢者に比べてその他の指摘個数が少ないことがわかった.同じ独立変数を要因,ハザードの平均タッチ率を従属変数として分散分析と多重比較を行った,高齢者は大人に比べて潜在はザートの指摘比率が少なく,大人と子供は高齢者に比べてその他の指摘比率が少ないことがわかった. 本研究の結果から,子供は顕在ハザード,潜在ハザード共に大人と同程度にハザードを知覚しているが,高齢者は死角などのいわゆる潜在ハザードに対する知覚能力が低下している可能性が示された.また,大人は「その他」に対する指摘が少ないことから,交通環境を選択的・効率的に捉えているが,子供や高齢者は網羅的・ボトムアップ的に交通環境を捉えている可能性が示された.
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