近年,欧州の一部の区間で時速200km以上の高速鉄道を既存の航空路線の代替機関として利用することで,空港の混雑緩和を目指す取り組みが行なわれている.競合する航空会社と鉄道会社とが提携し,国際線に接続する鉄道の区間を航空券と一緒に購入できるサービスを提供している.本研究はこのような提携が市場シェアおよび社会的厚生に与える影響を定性的に明らかにすることを目的とする. 平成26年度は3都市ネットワークにおいて,需要関数に多項ロジットモデルを仮定し,提携モデルを定式化した.航空と鉄道が競合する区間においては,各機関のサービス品質の大きさに関わらず,提携サービスにより航空シェアは減少し,鉄道シェアおよび総需要が増加することを明らかにした.平成27年度は同一市場の高速バスや他社企業等の存在による消費者の非購買選択が提携効果に与える影響を分析した.この結果,国内市場において非購買の効用が大きい場合(例えば,移動距離が短い市場)には,提携は3都市ネットワーク全体の社会的厚生の増加に有効であることを示した.また,非購買の効用が小さい場合は乗り換え市場の潜在需要が大きい場合に限り,社会的厚生は増加することを示した.さらに,当年度は前年度の提携モデルを乗り換え空港に容量制約を課したモデルに拡張し,空港容量および非購買の効用の大きさと提携効果との関係を分析した.結果,提携によって限られた航空容量が鉄道のアクセス不可能な国外路線および国外からの乗り継ぎ路線に配分され,鉄道の効率的な利用により社会的厚生は増加することを示した.
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