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平成29年度前半は、28年度までに収集してきたテル・ベグム遺跡出土資料およびシャフリゾール地域・先史遺跡表面採集資料の調査データを整理・分析し、前7千年紀後葉から約3千年間におよぶ暫定的な地域編年案を構築した。結果、シャフリゾール地域の考古資料は時代を通じて地域性が大変強く、周辺地域の既知資料との比較が困難であること、したがって、その検証には新たな遺跡発掘調査による資料の追加を待たねばならないことが理解できた。しかし一方で、27年度から今年度まで進めてきた、東京大学総合研究博物館所蔵の近隣遺跡土器資料の整理成果を対照データとして活用することにより、一定の確度を担保できる編年案を示し、北メソポタミアで構築されていた伝統的な編年観との相違、および今後研究を重点的に進めるべき編年上の空白や問題点を明らかにすることができた。
こうした編年上の空白の一つが、前6千年紀前半であった。しかも、この時期はシャフリゾール地域のみならず、広く「肥沃な三日月地帯」東部を通じて未解明のままに残されている。ただし、シャフリゾール地域・先史遺跡表面採集資料の中にはごく少数、この時期の可能性を匂わせる資料が含まれており、そのほとんどがシャイフ・マリフという遺跡で採集されていた。そこで、更なる研究の展開を念頭に置き、8月から9月にかけてこの遺跡の地形計測を実施した。
平成29年度の後半は本研究のまとめとして、以上の研究成果の発信に注力した。まず、7月に開催された日本西アジア考古学会第22回大会でテル・ベグム遺跡の調査研究を中心に、10月に開催された日本オリエント学会第59回大会でシャフリゾール地域・先史遺跡表面採集資料の調査研究を中心に報告した。そして、2月には東京で国際ワークショップを主催し、本研究の包括的な成果を発表するとともに、内外の研究者と意見交換を行なう機会をもった。
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