農耕社会の起源地「肥沃な三日月地帯」の中で、都市文明の発祥地・メソポタミア低地と接するシャフリゾール地域を対象として、低地開発の始まる前7千年紀後葉から都市形成期にあたる前4千年紀までの考古学的編年案を土器資料から構築した。地域の物質文化には一貫して独自性が認められるが、それはメソポタミア低地だけでなく、多方面の隣接地域からの影響が混ざり合って醸成されていた。シャフリゾール地域を介して、メソポタミア低地が各地との地域間関係を維持していたことの証左になるだろう。都市文明がメソポタミア低地だけでなく、周縁を含めた広域的な社会基盤に支えられて成立した事実を強く示唆する研究成果が得られた。
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