本研究の主たる目的は、①19世紀末フランスにおける実証主義の展開の思想史的研究、および②ベルティヨン家についての伝記的研究の二点である。これらの二点について、それぞれ以下のような成果をあげた。 ①すべての自然現象を物理法則によって説明しようとする実証主義にとってのアポリアが「身体」であったことを明らかにし、「病気」や「痛み」という概念に着目することで、このアポリアに新たな視角からアプローチする可能性を示した。 ②19世紀フランスの実証主義を体現するベルティヨン家の、アルフォンス・ベルティヨンに注目し、彼と関わりの深い写真技術の歴史を考察することで、写真イメージの思想史的研究への足がかりを得た。
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