今年度は、部活動における生徒に対する指導者(教員)の期待が、指導者の声かけに与える影響について縦断的に検討するとともに、指導を受けた学習者の自己能力評価の変容についても検討した。 具体的には、一つの中学校のサッカー部を対象として、そのチームの指導者である教員のサッカー指導場面をVTR撮影し、生徒に対する指導者の声かけを分類した。分類には、前年度の研究結果より、【賞賛】、【励まし】、【叱責】、【直接的指導】、【間接的指導】、【統制的行動】、【親和的行動】、【その他】の8指標を用いた。なお、VTRの撮影の回数は10回で、撮影期間は連続する8週間であった。 VTR撮影に先立ち、指導者が指導している各生徒に対して抱いている期待値を評価するために部活動の主たる指導者1名に生徒のサッカーの競技力に関する質問紙調査を実施した。また、縦断的な生徒の自己能力評価の変容を定量化する尺度として『サッカーに関する自己能力評価尺度』(研究実施者が作成)を使用した。この尺度を縦断調査の前後に実施し、その各下位尺度の変化と指導者から受けた指導行動の関係について検討した。 その結果、指導者の期待値の高低によって分けられた2群間の【その他】以外の指導行動の合計頻度において、高群が低群に比して有意に高い頻度を示したことから、部活動中の指導者は期待値の水準が高い生徒に対して、より積極的に指導を行っている可能性が示唆された。 さらに、生徒の自己能力評価の変容と指導行動の関係については、自己能力評価の合計値と【賞賛】の間に有意な正の相関関係が、また【直接的指導】との間に正の相関傾向が認められたことから、上記の指導行動が生徒の自己能力評価の変容に影響を与え得る可能性が示唆された。
|