本研究は口腔バイオフィルム形成における Actinomyces naeslundii の線毛機能と歯周炎発症の関係を遺伝子工学的手法により明らかにすることを目的としている。A. naeslundii 菌体よりDNAを抽出した後、線毛をコードしている遺伝子を不活化させた線毛遺伝子変異株作製のための遺伝子クローニング操作を行ない、電子顕微鏡鏡を用いて菌体の画像解析を行なった。その結果、A. naeslundiiには2種類の線毛があることが確認できたが、本菌の線毛遺伝子変異株の獲得に至ることはできなかった。 また本研究課題と関連して同時並行で進めている口腔バイオフィルム形成阻害による歯周病予防法の確立を目的とした研究では、太陽電池を付与した酸化チタン光触媒機能と電動歯ブラシとの併用効果について検討を行なった。まず、太陽電池を付与した酸化チタン光触媒機能のバイオフィルム除去効果について、A. naeslundiiのほか、Streptococcus mutans と Porphyromonas gingivalis を用いてカバーガラスにバイオフィルムを形成後、太陽電池を付与した酸化チタン半導体の電気回路をリン酸緩衝液中に浸してバイオフィルムに作用させ、バイオフィルムを含む懸濁液の濃度を測定した。次にこの電気回路を付与した電動歯ブラシを用いてバイオフィルムに機械的振動を与えた後、カバーガラスにクリスタルバイオレット染色を行ない、アルコール脱色操作により得られた溶液の濃度を測定した。その結果、太陽電池を付与した酸化チタン半導体を電動歯ブラシと併用することで、電動歯ブラシのみの時に比べてバイオフィルム除去効果が増加し、酸化チタンの光触媒機能と半導体内部を流れる微弱電流が口腔バイオフィルムの形成抑制に貢献することを明らかにした。
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