研究課題/領域番号 |
26870674
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
横井 由紀子 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (60469012)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二酸化チタン / 光触媒作用 / 焼結体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、傾斜機能付与させた二酸化チタンの基礎的データを追究し、生体親和性と抗菌性の割合を随時容易にコントロールする手法を確立し、患者さん各自に適合したテーラーメイドの二酸化チタン焼結体を作製することである。 二酸化チタンを600℃から1200℃それぞれに加熱した試料を作製した。用途に合わせその機能をコントロールでき得る材料の開発を検討するため焼成条件を決定した。各試料の細胞初期接着について検討するため、ぬれ性の計測を行った。細胞培養試験では、マウス線維芽細胞を試料上で培養し、細胞毒性試験を行った。低温で焼成したアナターゼ優位の試料では、細胞は増殖しなかった。マウス骨芽細胞を培養しその増殖、細胞形状、アルカリフォスファターゼ(ALP)の発現について観察した。線維芽細胞と同様に低温で焼成した試料では増殖できなかった。900℃、1000℃の試料ではルチル型優位ではあるがアナターゼも存在するため生体親和性を期待する環境下すなわち細胞増殖を促した。ALPについては、培養7日後と14日後に計測した。1100℃および1200℃の試料でALPの量が最大となり、石灰化が促されていることが示唆された。低温の700℃の試料は細胞数およびALPは最低の値を示した。生体材料として傾斜機能が制御可能となれば、歯科インプラント体の長期予後に期待できる。 27年度では、・生体親和性および抗菌性を自在にコントロールするための焼成条件の確立および焼結体作製を引き続き行った。・焼成条件によって作製された試料の細胞初期接着について検討するためぬれ性を計測した。・傾斜機能を付与した焼結体のルチル型およびアナターゼ型の比率を検討するため、結晶相の同定を行った。また光触媒作用の評価をメチレンブルーおよびインクにて行った。・傾斜機能を付与した焼結体の抗菌性試験の実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年は細胞培養実験および試料の作製に重点を置き、研究を遂行した。 平成26年から引き続き、傾斜機能を有する二酸化チタンの試料片を作製するにあたり、アナターゼ型二酸化チタンが、900度前後の焼成温度にてルチル型二酸化チタンに転移することを利用した。焼成条件・温度・の範囲を様々に変化させ試料を作製するとともに、細胞培養実験に使用する条件を統一した試料作製も行った。安定した傾斜機能付与試料を得るため、試料ごとの基礎的データを得るため再度繰り返し計測を行う必要がある。 細胞培養では、マウス線維芽細胞による細胞毒性試験、マウス骨芽細胞による細胞増殖試験を行った。・実験試料として700℃1300℃の温度設定を検討した二酸化チタン試料を作製した。・焼成条件を変化させたときの、物理的性質(硬さ、表面性状の観察)を計測した。・各焼成温度で焼結した試料片の焼結状態の変化を観察した。(表面粗さ、ぬれ性の測定)・細胞培養試験を行い、生体材料としての適性となる焼成温度について検討をおこなった。・抗菌試験の予備実験を行った。以上、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
傾斜機能の調節に伴うルチル型およびアナターゼ型二酸化チタンの両方を有する試料片作製および試料片の物理的・化学的評価を引き続き遂行する。作製した各試料片上に細胞培養実験を行う。生体材料としての生体親和性の評価となる。その評価をフィードバックし、生体親和性および抗菌性を自在にコントロールするための焼成条件の検討と試料作製行う。・焼成条件によって作製された試料の物性を計測。生体材料として適応範囲であるかどうか検討する。・傾斜機能を付与した焼結体の細胞適合性評価(金属系インプラント材料の細胞適合性評価方法〔参考:JIS T 0301〕)・傾斜機能を付与した焼結体試料上での骨芽細胞の挙動を評価する。・現在多く使用されている生体セラミックスであるハイドロキシアパタイトやジルコニアとの比較、インプラント体として使用されているチタンとの比較を行う。・傾斜機能を付与した焼結体の抗菌性試験の確立(参考:JIS Z 2801、感受性試験)・抗菌性の機能を検討するための抗菌性試験は、標準株P.g菌培地上に作製した試料を置き、そのコロニー数の変化について細菌挙動について観察する。・研究結果をまとめ学会発表や論文作成を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品が概算よりも安価に購入でき、差額が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究消耗品として使用予定。
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