研究課題/領域番号 |
26870681
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
村田 晴美 中京大学, 工学部, 助教 (10707186)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 音楽電子透かし / 音楽理論 |
研究実績の概要 |
本研究では,透かしの埋め込みに起因する音が知覚された場合であっても,ステゴデータが違和感のない音質であれば問題がないという考えに基づいて音楽理論を用いた音楽電子透かし法を提案している.提案法では,音楽理論のうち,対位法に着目してホストデータのメロディラインおよびベースラインと協和音の関係になるように透かし信号を付加することにより透かしを埋め込む.また,ホストデータで演奏されている音を各種音階にピッチ変換した音を透かし信号として用いている.これにより,ホストデータと同じ音色を有する音を作成することができるため,透かし信号が知覚された場合であっても違和感がないと考えられる. 本手法の有効性を確認するために,電子情報通信学会の情報ハイディング及びその評価基準委員会(IHC委員会)で定められている音響電子透かしの評価基準に基づき,音質の客観的評価およびMP3圧縮などを含む攻撃に対する耐性実験を行なった.実験の結果,音質の客観的評価および攻撃に対する耐性実験において,ともに評価基準を満たすことができた.しかしながら,音質の主観的評価に関しては十分に良い結果とは言い難いため,客観的評価だけではなく主観的評価も向上できるような改善が課題となる. なお,上述の研究成果については,国際会議プロシーディング1件および国内学会発表5件を通じて広く一般に公開した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画で述べた音源の定位を利用した音楽電子透かし法の音質・耐性評価はまだ行なえていない.平成27年度以降の研究計画である音源分離を用いた音楽電子透かし法で音楽理論を利用してホストデータと透かし信号が協和音の関係になるように埋め込む手法としてピアノの簡単な楽曲に対する埋め込み法を先に考案した.発音数が少ない楽曲では,ホストデータの音高推定の誤りによる正確な協和音を選択することができない場合に音楽上の違和感が生じてしまうことから,ホストデータの音高は既知で行なった.被験者10名でMOS(Mean Opinion Score)による音質の主観的評価実験からホストデータで4.2点,提案法で3.6点という評価が得られ,ホストデータと同程度の音質を得ることができた.次に,ポピュラー音楽を対象とした手法を提案した.ポピュラー音楽ではピアノの簡単な楽曲と比較して同時刻で複数の発音があるため,ホストデータの音高推定が困難になるが,誤りがあった場合であっても音がマスキングされて違和感が低減することがあった.そのため,ポピュラー音楽に対しては音高推定から行ない,有効性を確認する実験を行なった.被験者10名によるMOSの結果,ホストデータで4.2点,提案法で4.4点となり,ホストデータより良いという結果を得ることができた. 以上の結果から,音楽理論を利用した埋め込み法については概ね順調であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究計画である音源の定位を利用した音楽電子透かし法の音質・耐性評価を先に行なう予定である.その際,IHC委員会で定められている音響電子透かしの評価基準で誤り訂正符号を利用してよいことから,音源の定位を利用した音楽電子透かし法に対して誤り訂正符号を導入することで透かしの耐性を強化する.その後,引き続き平成27年度以降の研究計画である音源分離を用いた音楽電子透かし法の実装を行なう.音楽理論を利用した埋め込みのアルゴリズムは概ね方針が立っているため,今後は音源分離を行ない,各音源に対して埋め込みが可能であるか実験により検証していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度はアルゴリズムの構築に関わる専門家の意見聴取を行なうために 学会発表を中心に研究を実施した.平成27年度は収集した情報を基にシステムの構築を 行なうため備品購入費用を繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に収集した情報を基にシステムの構築を行なうために備品を購入する予定である.
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