研究課題
本研究の目的は、ヒトの病態に極めて近い非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウスにおいて肝臓癌の進展を、水素の投与法を工夫した新規予防法により抑制可能であるかを検証し、その分子機構を明らかにすることで、水素を取り入れた食餌療法の確立を目指すことである。昨年度は、NASHモデルマウスに高脂肪食(HFD: High Fat Diet)を投与し、通常環境下(コントロール群)あるいは水素環境下(水素群)で飼育を行い経時的に観察を行った。水素群では水素水または水素ガスの単独投与、水素水・水素ガス併用投与で検討を行った。解剖し肝臓の外表面の観察および連続病理切片の作製により腫瘍の体積、個数の測定を行った。水素群ではコントロール群に比べて腫瘍の発生数が抑えられている傾向にあった。腫瘍であるかの確認は、HE染色標本の顕微鏡観察、抗Ki-67抗体を用いた免疫染色により行った。次に、NASHモデルマウスのNASH時期に解剖、肝臓を採取し、免疫染色およびreal-time PCR法により炎症性細胞の浸潤状況を検討した。水素群ではコントロール群に比べて炎症性細胞の浸潤が抑えられており、炎症性サイトカインの発現量も抑制されていた。さらに、NASH時期のマウス肝臓よりRNAを抽出し、DNA microarrayシステムを用いて網羅的なmRNA発現の解析を行い、疾病状態と照合し病態像を説明する遺伝子変化を明らかにした。候補となる遺伝子をピックアップできたので、現在はその後の検討を詳細に行っている。
2: おおむね順調に進展している
水素投与によりNASHモデルマウスにおいて腫瘍形成が抑制されることを確認した。また、検討条件によって炎症性細胞の浸潤および腫瘍形成抑制効果に違いが見られることを明らかにし、再現性も確認できた。さらに、DNA microarrayシステムを用いて網羅的なmRNA発現の解析を行い、疾病状態と照合し病態像を説明する遺伝子をリストアップできた。次年度は水素投与時に腫瘍形成抑制に関わる分子を特定すべく細胞株を用いた検討を行う予定である。酸素消費率測定に関しては測定機器の条件設定が完了し、検体が採取でき次第測定を行う予定である。
平成27年度はNASHモデルマウス肝細胞におけるミトコンドリア機能評価を行う。また、BHA(Butylated Hydroxyanisole)をNASHモデルマウスに投与し、NASHモデルマウスの発癌における活性酸素の役割を明らかにして水素の作用点を考察する予定である。
購入業者の値引きがあり予定より残余が生じた。
27年度研究費の物品費に組み込み執行する。
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