研究課題/領域番号 |
26870682
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
祖父江 沙矢加 中部大学, 臨床検査技術教育・実習センター, 講師 (50513347)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 水素 / 非アルコール性脂肪肝炎 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒトの病態に極めて近い非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルマウスにおいて肝臓癌の進展を、水素の投与法を工夫した新規予防法により抑制可能であるかを検証し、その分子機構を明らかにすることで、水素を取り入れた食餌療法の確立を目指すことである。これまでにNASHモデルマウスに水素を投与する事でNASH由来の肝臓癌の発症を著明に抑制する事を観察し、またその効果の再現性も確認した。免疫染色等での検討では水素が炎症性細胞の浸潤を抑制することを同時に観察している。またこのNASHモデルマウスにBHAを投与し活性酸素の発生を制御すると同様に発癌が抑制されることも観察した。そこで今年度はDNA microarrayの結果をgene set enrichment (GSEA)解析により詳細に検討したところ水素は生体内で広範な抗酸化ストレス関連分子を誘導することを確認した。水素はこれまでにNrf2を誘導し抗酸化作用を示す事が示されている。興味深いことに本検討ではNrf2の下流で制御される遺伝子が全て誘導されているわけではないことが観察され、他の分子機構の存在が示唆された。そこでさらにGSEA解析を進めたところ、水素はヒストンにより制御される遺伝子群の発現に影響を与えることを見いだした。さらにこの作用はmitochondrial unfolded protein response (mtUPR)を誘導することも見いだした。水素はNASH発症に至るsecond hitの炎症、酸化ストレスを制御するとともに、mtUPRの誘導によりミトコンドリアを保護することで発癌に至る病態を軽減すると推察された。現在水素のより誘発される広範な作用の中でどの作用がドライバーとして働くか考察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年3月までの論文投稿を目標としていたが、条件設定と再現性を確認するために予想以上に多くの時間がかかってしまったことと、DNA microarrayの解析からの新規発見もあり、平成29年度も研究を継続することとした。2017年4月末現在実験についてはほぼ完了しており、現在論文執筆中であるが、当初の目標は過ぎているためやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
実験についてはほぼ完了しており、できるだけ早い段階での論文投稿を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物を使った実験において再現性の確認に予想よりも多くの時間がかかってしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
現在早急な論文投稿を目指して執筆中である。前年度の残金は論文投稿のための費用、および場合によってはrevise実験に充てたいと考えている。
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